2020/03/10
医師が語る感染症への知識のワクチン
怖い「劇症型A群溶連菌感染症」
A群β溶連菌は、このほかに丹毒(皮膚の感染症の一つで、感染部位の痛みや圧痛があり、全身症状として発熱をともなうことがあります)、膿痂疹(とびひ)、蜂窩織炎、敗血症、壊死性筋膜炎などを引き起こすことがあります。
最も恐れられているのは、劇症型A群溶連菌感染症といわれている疾患です。この疾患は小児より成人に多く見られ、急激に発症するショック症状から多臓器不全または死に至る敗血症病態と定義されています。
溶連菌感染症が流行するのは、咽頭・扁桃炎は冬から春に多く、皮膚感染症は夏から秋にかけて多いといわれています。
診断

咽頭所見で臨床的に診断できなくはありませんが、正確な診断は菌を分離することです。近年は迅速診断として、病巣擦過綿棒から抽出したA群特異多糖体とA群特異多糖体抗体を反応させて調べる迅速キットが日常診療で使用され、診断に役立っています。
しかし、溶連菌は人の常在菌の一つでもあり、咽頭から分離されても、感染症の原因というわけではないことがあります。また細菌の細胞外産生物質に対する抗体測定として抗ストレプトリジンO(ASO)の値を測定して、診断の一助とすることもあります。
感染経路、感染力
感染経路は、感染発症者の気道分泌物との接触です。つまり感染発症者からの飛沫感染や直接接触感染により伝搬していきます。

咽頭炎の場合、急性期に最も感染性が高いとされています。適切な抗菌剤による治療を行うと24時間以内に感染性は消失するとされていますので、治療開始後48時間経過すれば集団生活に復帰できるといわれています。もし無治療であれば、通常は数週間かけて治っていきます。
また学校における流行期に学童を咽頭培養で調査した結果、溶連菌感染があった人は25%いましたたが、この人たちから他人へ感染が伝搬することはほとんどなかったとの報告があり、無症状の場合や咽頭保菌者からの感染の可能性は低いといわれています。
ただし、溶連菌感染症が集団発生していて、かつリウマチ熱や急性糸球体腎炎が複数例発生している場合、適切な治療にも関わらず数週間にわたって同一の人に複数回A群溶連菌による咽頭炎が生じている場合は、周囲の無菌保菌者に対しても治療の介入が必要だといわれています。
医師が語る感染症への知識のワクチンの他の記事
おすすめ記事
-
-
備蓄燃料のシェアリングサービスを本格化
飲料水や食料は備蓄が進み、災害時に比較的早く支援の手が入るようになりました。しかし電気はどうでしょうか。特に中堅・中小企業はコストや場所の制約から、非常用電源・燃料の備蓄が難しい状況にあります。防災・BCPトータル支援のレジリエンスラボは2025年度、非常用発電機の燃料を企業間で補い合う備蓄シェアリングサービスを本格化します。
2025/04/27
-
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
-
-
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
-
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
-
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
-
BCMSで社会的供給責任を果たせる体制づくり能登半島地震を機に見直し図り新規訓練を導入
日本精工(東京都品川区、市井明俊代表執行役社長・CEO)は、2024年元日に発生した能登半島地震で、直接的な被害を受けたわけではない。しかし、増加した製品ニーズに応え、社会的供給責任を果たした。また、被害がなくとも明らかになった課題を直視し、対策を進めている。
2025/04/15
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方