2020/03/24
海外のレジリエンス調査研究ナナメ読み!
緊急事態に対する準備を徹底
図3は事業継続計画(BCP)に関して実施した事項について尋ねた結果である。日本でこのような調査が行われる場合、「BCPを発動しましたか?」もしくは「対策本部を設置しましたか?」という設問になることが多いが、本調査においては「緊急対応チーム(incident management teams)を発動したか?」という設問と「戦略的危機管理チーム(strategic crisis management teams)を発動したか?」という設問に分かれている(注4)。結果的には両者はほぼ同じような数字になっているが、このように区別して尋ねることによって、直面した事態を組織がどのようにとらえて対応したかが、より具体的に分かる可能性がある。
筆者が個人的に注目したのは、全ての計画に対して演習が実施されていることを「確実にした」(ensure)という回答が半数を超えている点である。日本企業において、全ての計画に関して演習を実施された企業がどのくらいおられるだろうか?
なお、全ての事業所において「対処するための計画やチェックリストが作成済みであること」を確実にしたという回答も半数以上あり、このような準備の徹底ぶりが具体的に分かるデータとなっている。
中止する業務の明文化も重要
またBCPの内容に関しては、「優先順位の低いサービスが特定され、BCPが発動された場合に中止する業務がどれか、従業員が知っている」という項目も非常に重要である。BCPを作成する際に、優先的に再開・継続させる業務を特定することは一般的によく知られているが、緊急事態発生時における優先順位が相対的に低い業務に関して、これらを中止することを明記することも、限られた経営資源を有効に活用するために非常に重要である。
特に今回のような感染症対応においては、多くの従業員が業務に従事できなくなったり、在宅勤務などを強いられるような状況が発生しているので、停止させる業務があらかじめ明文化されていれば、状況に応じた対応体制の切り替えを円滑に行う際に役立つ。BCPの中でこのような観点が検討されていない企業においては、今からでも検討を進めていただきたい。
本調査は非常に短時間で行われたにもかかわらず、海外(主に欧米)の企業における準備状況や、現時点での対応状況が具体的に分かる貴重なデータとなっている。もちろん感染者の発生状況や各国政府などの対応方針などは、日本企業が置かれている状況とかなり異なるが、これから実施すべき施策や既存のBCPの内容の見直しなどに参考になる点も多いのではないだろうか。
本報告書ではこれら以外にも、人事部門、IT、渡航制限などに関する調査結果も含まれているので、事業継続にとどまらず、さまざまな観点で参考になると思われるので、ダウンロードして全体をご覧になることをお勧めしたい。
■ 報告書本文の入手先(PDF 16ページ/約0.9MB)
https://www.thebci.org/resource/bci-coronavirus-organizational-preparedness-survey.html
注1)BCIとはThe Business Continuity Instituteの略で、BCMの普及啓発を推進している国際的な非営利団体。1994年に設立され、英国を本拠地として、世界100カ国以上に9000名以上の会員を擁する。https://www.thebci.org/
注2)原文では「local suppliers」と表現されており、この「local」がどの程度の範囲なのかは明記されていないが、新型コロナウイルスの影響で中国にある多数のメーカーで生産中止が発生したことを考慮すると、恐らく中国など外国のサプライヤーから国内のサプライヤーに切り替えたということではないかと推測される。
注3)原文では具体的に言及されていないが、事業活動に関わるサプライチェーン全体における温室効果ガスの排出量には、輸入に伴う化石燃料使用によって排出される二酸化炭素の量も含まれるため、国内での調達に切り替えることによってこの分が削減できるという意味であろう。
注4)一般的に、緊急対応チームは何らかのインシデントが発生した際の初期対応にあたるための組織であり、戦略的危機管理チームは経営層が中心となって経営戦略・事業戦略といった観点から対応方針の検討を行う組織である。
海外のレジリエンス調査研究ナナメ読み!の他の記事
おすすめ記事
-
-
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2026/06/23
-
W杯に水を差したDAZN契約プラン表示が原因で大炎上
世界最大のスポーツイベントであるサッカーのW杯が6月12日に開幕。日本は1勝1分けで決勝トーナメント進出を大きく引き寄せている。その裏でW杯の視聴契約を巡ってSNSで大炎上していたのが、スポーツコンテンツの配信会社であるDAZNだ。W杯の全試合を視聴できる年間契約プラン表記に問題があり、13日にお詫びを発表した。しかしその対応も反感を買い、炎上は継続。最終的には年間プラン自体を取り下げた。DAZNの何が問題だったのか、消費者問題に詳しい住田 浩史弁護士に聞いた。
2026/06/23
-
-
-
-
企業の副業解禁とコンプライアンス対策を支援
企業の副業解禁の流れが加速している。従業員は本業以外の労働を増やすことで、収入増が見込める。従業員が副業で獲得したスキルで、本業への貢献も期待できる。企業側にとっても、副業は採用活動に活用できる。業務発注から関係を深めてからの転職や採用後のミスマッチを防止する効果がある。一方で、副業の一般化に伴い、同業他社での競業や情報漏えい、ブランド毀損、過重労働など、副業リスクは増加している。フクスケ(東京都千代田区)は、企業の副業制度の運用支援に加え、副業コンプライアンス向上に関するデータを分析し、リスク診断サービスも提供している。代表取締役社長の小林大介さんに、企業の副業解禁がもたらす影響について話を聞いた。
2026/06/12
-
-








※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方