2020/04/23
日本企業が失敗する新チャイナ・リスク
■事例を見ながら何が問題なのかを検証
問題を検証するため、実際に当社の顧客で起きた事例を紹介します。果たして、中国政府が何の前触れもなく処罰を行っているのかを見てみたいと思います。ちなみに、事例の内容はこの工場の現状調査を行った当社スタッフからの報告書の一部です。
「A工場」は中国に進出してはや20年の日系企業。「優秀な中国人が環境管理本部長に就いています」と、現地の日本人責任者は開口一番我々に紹介しました。
中国人の環境管理本部長によれば、日本人駐在員の環境政策に対する危機感の低さが長らく悩みの種になっているとのこと。しかし、いよいよしびれを切らした彼は、当社に事の重大さを日本人に伝えてほしいと切実な思いで相談してきました。
なお、当社STECOは、日本の本社からの直接依頼で現地グループ法人の「環境現状診断」を実施しています。そうしたなかで当社スタッフが同本部長にヒヤリングを行ったのですが、その際、前述のような悩みを持っていることを知ったという流れです。概要を以下に示します。
さらに、建築竣工後にも次々に違法建築がなおざりに許可されていた。工場の増設、駆体外面へのプレハブ部屋の追加、雨に濡れないコンテナヤードをつくるための庇(ひさし)の追加……枚挙にいとまがないほどの変更を行っている。
本来ならば、増設した際に作成することが義務づけられる「環境影響評価報告表」も、環境局にコネのある業者を使うことで、うまく申請が通った。ところが、近年、環境指導が厳しくなり、正しく改善していこうとした矢先に問題が発生してしまった。
1.不動産証書がないために建築改修が行えない(増設部分ではすでに製造ラインが稼働中だが、当初の建築に戻さなければならない。しかしこれは現実的に困難)
2.「環境影響評価報告表」を作成してくれる「政府にコネのある業者」とはすでに人脈がなくなり、コネもなくなってしまっている状態
3.正規の「環境影響評価報告表」作成業者が違法建築の事実を知って尻込み、どこも改定作業を受け入れてくれない
4.上半期には新規に製造ラインの増設計画も予定さているが、本部長はその計画推進と環境問題解決の板挟みになってしまっている
5.そのまま増設してしまうと、建築的にも環境的にも行政処罰などの法的処罰は逃れられない
6.このような状況にも関わらず、日本人駐在員に切迫感がない
日本企業が失敗する新チャイナ・リスクの他の記事
おすすめ記事
-
「防災といえば応用地質」。リスクを可視化し災害に強い社会に貢献
地盤調査最大手の応用地質は、創業以来のミッションに位置付けてきた自然災害の軽減に向けてビジネス領域を拡大。保有するデータと専門知見にデジタル技術を組み合わせ、災害リスクを可視化して防災・BCPのあらゆる領域・フェーズをサポートします。天野洋文社長に今後の事業戦略を聞きました。
2025/10/20
-
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/10/14
-
走行データの活用で社用車をより安全に効率よく
スマートドライブは、自動車のセンサーやカメラのデータを収集・分析するオープンなプラットフォームを提供。移動の効率と安全の向上に資するサービスとして導入実績を伸ばしています。目指すのは移動の「負」がなくなる社会。代表取締役の北川烈氏に、事業概要と今後の展開を聞きました。
2025/10/14
-
-
-
-
トヨタ流「災害対応の要諦」いつ、どこに、どのくらいの量を届ける―原単位の考え方が災害時に求められる
被災地での初動支援や現場での調整、そして事業継続――。トヨタ自動車シニアフェローの朝倉正司氏は、1995年の阪神・淡路大震災から、2007年の新潟県中越沖地震、2011年のタイ洪水、2016年熊本地震、2024年能登半島地震など、国内外の数々の災害現場において、その復旧活動を牽引してきた。常に心掛けてきたのはどのようなことか、課題になったことは何か、来る大規模な災害にどう備えればいいのか、朝倉氏に聞いた。
2025/10/13
-
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/10/05
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方