2020/05/12
海外のレジリエンス調査研究ナナメ読み!
規制緩和後の対応
ところで、今回の報告書では最後に「Recovery」というセクションが追加されている(注4)。これは前述のように、規制の解除やパンデミック後を視野に入れ始めた組織が増えてきたことに対応しているものと思われるが、このセクションには新たに追加された設問だけでなく、他のセクションから移動された設問もある。例えば図2は第3回の報告書を紹介した記事にも掲載させていただいた、「復旧計画を実行する際の発動基準を決めた」という設問に対する回答の結果である。この設問は、第2回および第3回では「Business Continuity Plans」というセクションに掲載されていたが、今回は「Recovery」に移されている。

図2で「既に実施している」という回答が60%前後でほとんど変化がないのに対して、「実施を検討中」が回を重ねるごとに増加しているのが興味深い。「既に実施している」すなわち復旧計画の発動基準が既に決まっている組織の多くは、パンデミックによるさまざまな規制などが開始された初期の段階で、既に決めていたのであろう。これに対して、初期の段階でそのような基準を決めておかなかった組織が、様子を見ながら徐々に検討を始めたため、このようなデータとなって現れたのではないかと思われる(注5)。
規制の解除やパンデミック後への移行に関連すると思われるデータをもう一つ紹介しておきたい。図3は「従業員に対して対応戦略の最新状況を伝えるために、組織全体に対する連絡を定期的に実施している」という設問に対する回答の結果である。「既に実施している」という回答の割合は、第2回と第3回との間ではほとんど変わらなかったが、第4回では目立って増えている。これは規制解除後の業務再開などがスムーズに進むように、計画や手順などが追加・更新されたり、それらを従業員に周知徹底する必要性が高まったことの現れであろう。

この設問について、本報告書ではメンタルヘルス対策としての観点も言及されている。つまり組織から定期的に連絡が来ることによって、在宅勤務もしくは自宅待機を強いられている従業員の孤立感が和らげられるというものである。第3回の報告書に関する記事の中でも、メンタルヘルス対策に関する設問や、それらの設問に対する回答状況を紹介させていただいたが、本報告書では第1回から一貫してメンタルヘルスに関する記述が多いと感じる(注6)。このような視点の違いを知ることも、海外での調査報告書を読むことの意義の一つである。
■ 報告書本文の入手先(PDF 18ページ/約1.0MB)
https://www.thebci.org/resource/bci-coronavirus-organizational-preparedness-report---4th-edition.html
注1)BCIとは The Business Continuity Instituteの略で、BCMの普及啓発を推進している国際的な非営利団体。1994年に設立され、英国を本拠地として、世界100カ国以上に9000人以上の会員を擁する。https://www.thebci.org/
注2)第1回〜第3回の調査結果については、それぞれ次の通り紹介させていただいた。
第93回:海外企業における新型コロナウイルスへの対応状況
BCI / Coronavirus Organizational Preparedness
https://www.risktaisaku.com/articles/-/27124
第95回:海外企業における新型コロナウイルスへの対応状況【続報】
BCI / Coronavirus Organizational Preparedness 2nd Edition
https://www.risktaisaku.com/articles/-/28441
第97回:海外企業における新型コロナウイルスへの対応状況【第3報】
BCI / Coronavirus Organizational Preparedness 3rd Edition
https://www.risktaisaku.com/articles/-/29855
注3)原文は次の通り:Planning to maintain increased use of tech after teams return to work
注4)今回の報告書の構成は次のようになっており、最後の「Recovery」が今回追加されたが、それ以外は第1回から第3回まで同じであった。
- HR/Staff Measures
- Health & Hygiene
- Travel
- IT, technology and telecoms
- Supply Chain
- Business Continuity Plans
- Recovery
注5)必ずしも、初期の段階で基準を決められた組織が「優れている」とは限らない。今回のように誰もが未経験で未知の領域が多い事象に関しては、さまざまな情報やノウハウが集まるのを待ってから基準を検討した方がよいということもあり得る。このあたりは個々の組織の業種やビジネス環境などによっても事情が異なるであろう。
注6)筆者個人が見聞きした範囲での主観的な評価で恐縮だが、日本国内で在宅勤務および自宅待機となっている方々のメンタルヘルスが話題に上る頻度の低さに対して、本報告書での扱いが多いと感じる。
海外のレジリエンス調査研究ナナメ読み!の他の記事
おすすめ記事
-
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/08/26
-
-
ゲリラ雷雨の捕捉率9割 民間気象会社の実力
突発的・局地的な大雨、いわゆる「ゲリラ雷雨」は今シーズン、全国で約7万8000 回発生、8月中旬がピーク。民間気象会社のウェザーニューズが7月に発表した中期予想です。同社予報センターは今年も、専任チームを編成してゲリラ雷雨をリアルタイムに観測中。予測精度はいまどこまで来ているのかを聞きました。
2025/08/24
-
スギヨ、顧客の信頼を重視し代替生産せず
2024年1月に発生した能登半島地震により、大きな被害を受けた水産練製品メーカーの株式会社スギヨ(本社:石川県七尾市)。その再建を支えたのは、同社の商品を心から愛する消費者の存在だった。全国に複数の工場があり、多くの商品について代替生産に踏み切る一方、主力商品の1つ「ビタミンちくわ」に関しては「能登で生産している」という顧客の期待を重視し、あえて現地工場の再開を待つという異例の判断を下した。結果として、消費者からの強い支持を受け、ビタミンちくわは過去最高近い売り上げを記録している。一方、BCPでは大規模な地震などが想定されていないなどの課題も明らかになった。同社では今、BCPの立て直しを進めている。
2025/08/24
-
-
-
-
ゲリラ豪雨を30分前に捕捉 万博会場で実証実験
「ゲリラ豪雨」は不確実性の高い気象現象の代表格。これを正確に捕捉しようという試みが現在、大阪・関西万博の会場で行われています。情報通信研究機構(NICT)、理化学研究所、大阪大学、防災科学技術研究所、Preferred Networks、エムティーアイの6者連携による実証実験。予測システムの仕組みと開発の経緯、実証実験の概要を聞きました。
2025/08/20
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方