2013/07/25
誌面情報 vol38
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複数の代替手段ツールを考える
災害が発生した時刻と、経過時刻により、使いやすい連絡手段を考えておくことも重要だ。東日本大震災は勤務時間中に発生したため、多くの社員が安否確認システムの端末となる携帯電話を持ち歩いていた。しかし、仮に夜間や休日で、安否確認システムが社用のものだったら、職場に置きっぱなしで、家には持って帰らない人もいたかもしれない。そうすると、やはり安否確認システム以外にも安否を確認できる手段を構築しておくことが求められる。
企業の中には、災害伝言ダイヤル171を使って安否を確認するという会社もあるが、171は、家族・親戚・友人などの間で行う個人の安否確認を目的としたもの。NTTも「会社等における社員等の安否確認のため利用いただくと、本来ご利用いただきたい個人の方々の安否確認に支障を来すことにつながる」として注意を呼び掛けている。また、災害発生後、数時間以内で災害伝言ダイヤルや災害伝言版などを使って全社員の安否を確認することも現実的ではない。数時間内で多くの人の安否を確認する必要があるのなら、やはり携帯端末などを利用して一斉に配信できるサービスの方が適していると言えるだろう。
個人の持つ連絡ツールは、一昔前に比べれば、固定電話、携帯、SMS、携帯メール、SNSなど格段に増えた。しかし、安否の報告を受ける側の会社が単一のシステムに依存していれば、仮に社員が5つの連絡ツールを持っていたとしても、1×5=5にはならず、1×5=1という方程式になってしまう。連絡をする側、受ける側がそれぞれ代替性のある連絡ツールを使えるようにしておく視点が重要になる。
④何を確認・報告するのか
何を確認、報告するかは、まず安全か、否かが基本になるが、どこにいるのか、出社できるか、できないか、会社の支援が必要か、必要でないか、家族の安否が確認できているか、いないかなど、それぞれの組織に必要な情報を決めておくことが重要になる。この項目数を少なくするためには、日常的に災害発生時の対応をしっかり教育・訓練しておくことだ。例えば、どこにいようとも、自ら出社・帰宅の判断をして行動する、会社の支援が必要な時にだけ会社に能動的に連絡する、などと決めておけば、災害時に改めてこれらの事項を確認しなくても済む。
災害時は、人事部も人手が少なくなることが予想される。その際、社員が多い企業ほど、細かな情報をすべて確認しようとしたら、いくら集計機能が優れた安否確認システムを導入していたとしても、その対応にかなりの時間を要することになる。
連絡が取れなかった時の対応を決める

これらの基本項目に加えて、考えておきたいのが、万が一連絡が取れなかった時の行動を決めておくことだ。危機発生時には何が起きるか分からない。停電が起きれば、社内の電話回線やネットワークは使えなくなり、長期化すれば携帯の基地局もバッテリーが切れて携帯すらつながらなくなる可能性がある。
そのような際にどうするかは、やはり日常的に、それぞれの主体が災害時の対応をあらかじめ決めておくことが重要になる。例えば社員だったら、安否確認が取れない場合は、安全な場所に退避する、出社途中ならどのような場合なら帰宅するか出社するかの基準を決めておく。意思決定者なら安否確認が取れない場合は代替者に任せる。・本社支店間だったら、それぞれのBCPに基づいて初動対応を進める、など。
もう1点、各個人が主要な連絡先は、固定電話、携帯電話、メールアドレスなどを紙に打ち出しておくことも有効だ。自分の携帯やPCのバッテリーが切れることも想定されることから、紙に打ち出しておけば、そうした際にも公衆電話などから電話を掛けることが可能になる。
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