ビジネスの再開について

図1は「全従業員に在宅勤務ポリシーを適用しているか」という設問に対する回答状況であるが、若干減少傾向にあるものの6割程度の組織がなお「既に実施している」と回答している。なお、ここで「在宅勤務ポリシーを適用している」というのは必要に応じて在宅勤務できるルールやシステムが用意されているということであり、必ずしもこれらの組織の全従業員が在宅勤務を実施しているとは限らない。しかしながらパンデミックが発生していない状況においても在宅勤務のメリットを享受するという意味と、今後起こり得るパンデミックの第2波、第3波に備えるという意味の両面で、在宅勤務できる仕組みを維持していることが重要であろう。

写真を拡大 図1. 「全従業員に在宅勤務ポリシーを適用しているか」という設問に対する回答状況(出典:BCI / Coronavirus Organizational Preparedness 6th Edition)

ちなみに、「可能であれば会議を電話会議に変更する」(原文ではconference callと書かれているが、もちろんウェブ会議も含まれるであろう)という設問に対しては依然として96.5%が「既に実施している」と回答しており、かつ国内外の出張規制の解除に関しても慎重な姿勢を表すデータが出ている。様子を見ながら慎重に事業活動の態様を変化させつつある様子が見て取れる。

図2は「部品や原材料などの調達の継続性を確保するためにサプライヤーを変更したか」という設問に対する回答状況である。「既に実施している」という回答が第5回まで増加傾向であったものが、第6回で減少に転じている。パンデミックが収束に向かい、各国・地域での事業活動が再開され始めたことで、一旦変更されたサプライヤーを元に戻した組織が現れているのではないかと思われる。なお、サプライヤーに関しては、主要なサプライヤーの事業継続計画(BCP)をレビューしたという回答が6割、Tier 2以下のサプライヤーのBCPもレビューしたという回答も3割強あるなど、興味深い調査結果が含まれているので、ぜひ報告書本文をお読みいただければと思う。

写真を拡大 図2. 「部品や原材料などの調達の継続性を確保するためにサプライヤーを変更したか」という設問に対する回答状況(出典:BCI / Coronavirus Organizational Preparedness 6th Edition)

BCPに関連する調査結果のなかで興味深いのは、「パンデミックによる影響の長期化にともなう優先順位の変化を反映して事業影響度分析(BIA)を見直した」という設問に対して、60.7%が「既に実施している」と回答していることである。この設問は第2回調査から設けられているが、実は第5回で一度53.5%に落ちたとき以外は、第2回からずっと6割強が「既に実施している」と回答している。 

このことは、調査に回答した組織の多くでBIAが所定の手法に基づいて実施されて文書化されており、かつ見直しを実施するためのマネジメントプロセスが存在していることを暗示している(注4)。単にBCPが作ってあるだけでなく、組織的にBCMに取り組まれることの長所が現れているのではないかと思う。