2017/08/25
防災・危機管理ニュース

国土交通省は24日、「水災害に関する防災・減災対策本部」の第5回会合と「南海トラフ巨大地震・首都直下地震対策本部」の第7回会合の合同会議を開催。石井啓一大臣を始めとする政務三役、毛利信二事務次官や局長級など幹部が一堂に会した。首都直下地震対策では2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けたロードマップが示され、訪日外国人を含む滞在者の安全確保、大会施設や周辺インフラの被害軽減などが示された。
首都直下地震では53のロードマップが示され、五輪関連はそのうち10。滞在者の安全確保では、特に訪日外国人の情報不足による混乱や被害発生を懸念。スマートフォンアプリやピクトグラム(絵文字)などによる情報提供や避難誘導を適切に行えるようにする。国交省は24日、防災に役立つ75サイトをひとまとめにし、4カ国語に対応するポータルサイト「Disaster Prevention Portal(ディザスター・プリベンション・ポータル)/防災ポータル」を開設した。東京都の「東京防災」や観光庁監修の「Safety tips」など主要サイトがひとまとめになり、スマートフォンにも対応。利用拡大に向け訪日外国人などへ告知を図っていく。
都心部の避難所に外国人など滞在者が集中し、居住スペースの減少や物資不足も予測されることから、避難所確保や物資輸送体制を強化。主要駅周辺での帰宅困難者対策も進める。発災時に備え、特に外国人の帰国のための空港アクセスとして鉄道やバス・タクシー以外に舟運も活用し人員輸送を行う。大会施設や周辺インフラの被害軽減では耐震性の確保と必要がある場合の補強を行うほか、東京都と連携し2019年度までに首都高速中央環状線内側の都心部で都道の完全無電柱化を実施。発災時は緊急災害派遣隊(TEC-FORCE)による復旧活動を行う。活動計画では最大全国から1日あたり約1940人が派遣され、受援側の関東地区の人員と合わせて約2360人が支援予定。
会議後、東京都の小池百合子知事が国交省を訪問し、石井大臣と五輪に向け会談。小池知事は無電柱化や舟運活用のため水辺の改善、ヒートアイランド対策のための遮熱性・保水性舗装の整備などを申し入れ。石井大臣も「水辺・舟運は東京の隠れた資源。無電柱化や遮熱性・保水性舗装も都と連携して進めていく」と応じた。
国交省の合同会議では首都直下地震以外に水害対策も話し合われた。大規模水害の大規模被害回避へ、氾濫場所を想定し事前対策。水門の機能向上や排水機場の耐水化、地下街の浸水対策といったハード面の対策に加え、企業のBCP(事業継続計画)策定の推進やタイムラインの策定・充実といったソフト面の対策も進める。また、九州北部豪雨の被災地で地域と連携しながら防災・減災プロジェクトを実施。得られた知見を全国に展開する。
■ニュースリリースはこちら
http://www.mlit.go.jp/report/press/mizukokudo06_hh_000066.html(国土交通省「Disaster Prevention Portal / 防災ポータル」を開設!)
(了)
リスク対策.com:斯波 祐介
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
-
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
-
「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
東京海上グループが掲げる「防災・減災ソリューション」を担う事業会社。災害対応のあらゆるフェーズと原因に一気通貫の付加価値を提供するとし、サプライチェーンリスクの可視化など、すでに複数のサービス提供を開始しています。事業スタートの背景、アプローチの特徴や強み、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/06/11
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/10
-
その瞬間、あなたは動けますか? 全社を挙げた防災プロジェクトが始動
遠州鉄道株式会社総務部防災担当課長の吉澤弘典は、全社的なAI活用の模索が進む中で、社員の防災意識をより実践的かつ自分ごととして考えさせるための手段として訓練用のAIプロンプトを考案した。その効果は如何に!
2025/06/10
-
-
緊迫のカシミール軍事衝突の背景と核リスク
4月22日にインド北部のカシミール地方で起こったテロ事件を受け、インドは5月7日にパキスタン領内にあるテロリストの施設を攻撃したと発表した。パキスタン軍は報復として、インド軍の複数の軍事施設などを攻撃。双方の軍事行動は拡大した。なぜ、インドとパキスタンは軍事衝突を起こしたのか。核兵器を保有する両国の衝突で懸念されたのは核リスクの高まりだ。両国に詳しい防衛省防衛研究所の主任研究官である栗田真広氏に聞いた。
2025/06/09
-
危険国で事業展開を可能にするリスク管理
世界各国で石油、化学、発電などのプラント建設を手がける東洋エンジニアリング(千葉市美浜区、細井栄治取締役社長)。グローバルに事業を展開する同社では、従業員の安全を最優先に考え、厳格な安全管理体制を整えている。2021年、過去に従業員を失った経験から設置した海外安全対策室を発展的に解消し、危機管理室を設立。ハード、ソフト対策の両面から従業員を守るため、日夜、注力している。
2025/06/06
-
福祉施設の使命を果たすためのBCPを地域ぐるみで展開災害に強い人づくりが社会を変える
栃木県の社会福祉法人パステルは、利用者約430人の安全確保と福祉避難所としての使命、そして災害後も途切れない雇用責任を果たすため、現在BCP改革を本格的に推進している。グループホームや障害者支援施設、障害児通所支援事業所、さらには桑畑・レストラン・工房・農園などといった多機能型事業所を抱え、地域ぐるみで「働く・暮らす・つながる」を支えてきた同法人にとって、BCPは“災害に強い人づくり”を軸にした次の挑戦となっている。
2025/06/06
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方