2017/10/03
防災・危機管理ニュース
Insane Footage From Mandalay Bay Las Vegas Shooting. (出典:YOUTUBE)
32階のホテルの部屋から500mも離れた会場を狙撃
パリ同時多発テロのバタクラン劇場の時と同じように演奏中の演出と思わせるような乱射事件。ただ今回、犯人の男性はホテルの32階に滞在し、部屋の厚さ数センチのガラス窓から500m先の道路を隔てた場所にある音楽コンサート会場に集まっている2万2000人をターゲットに、フルオートの機関銃による銃撃と、スコープを付けたライフル銃を使って俯瞰的に乱射したもよう。
乱射が始まってからもコンサートのステージライトが観客を照らし続けていたことが、観客を狙う犯人にとっては都合の良い条件となったようだ。
容疑者のは、自宅から同居者の62歳の女性と一緒に2台の車に分乗し、大量の武器を持ち込んだことから、かなり前からホテル、コンサートの時間、観客数、射撃環境など、入念にチェックしかなり周到な計画的犯行と伝えられている。警察は「容疑者がすでに死亡しているため、事件の背景など詳しいことはわかっていない。容疑者と一緒にいたと見られる女の行方を探している」と記者発表している。
犯人はフルオート機関銃での乱射の他、ライフルや別の自動小銃で約4分半の間に、6回ほど弾倉を交換し、約600発以上を発射したと伝えられている。
ホテルの環境と周囲の状況
このホテルでは主に家族向けのイベントとして3日間にわたってカントリーミュージックのコンサートが行われており、犯人はコンサートの最後の歌の終了後に乱射を始めたそうだ。状況は下記の通り。
・俯瞰射撃だったため、撃たれた人が様々な場所で倒れており、犯人が乱射を続けていたため、従業員や警備員も身を守るのがやっとで、避難指示や救出活動ができなかったようだと報道されている。
・なぜか、会場のすべての出入口が閉鎖されており、パニックになった観客がゲートなどを押し倒す形で出口を作り、ホテルに面する通りまで避難した。
・他のホテルでも乱射事件が起こっているとか、爆弾が仕掛けられたなど、デマ情報が飛び交って、やっとの思いで会場から出ても人々はどこに逃げていいのかわからず混乱したもよう。
・車に乗って避難を試みた観光客により数千台が一斉に、行き先も無く避難を開始し、周囲の道路は全ての方向で大渋滞した。
・乱射のニュースがラスベガス中に伝わった直後、各ホテルがメインロビーを閉鎖し、空港も閉鎖されたと伝えられている。
ラスベガスホテル協会は、今後の対応としてホテルにチェックインする際、乗ってきた車の中や持ち込み荷物、宅配荷物などのすべてを金属探知機やX線装置で確認するよう検討しているそうだ。
消防と警察の活動内容
ラスベガス市消防局は、先着隊員が防弾ヘルメットとジャケットを着装し、警察の援護を受けながら現場活動を行った。銃乱射の現場に遭遇した場合、乱射が続いている時、どのように身を守りながら救命活動ができるのか。下記のようなことが課題となっている。
・撃たれた場合はその場で倒れ込まずに力の限り、安全な場所まで逃げ続けること。
・今回の事件の主催者は思いつかなかったようだが、犯人が狙撃するのに有利な観客を照らし続けていた照明を消す。
・乱射が続いている時に仲間が撃たれたら、動けるようであればその場ですぐに止血しない。まずは銃弾から身を守れる場所に向かって仲間を引きずってから救命処置を行うこと。
・乱射が止まった際、次の弾倉を装着する数秒の間に思いっきり走って、銃弾から身を守れる場所へ逃げるよう指示。
・倒れている人に躓かないように逃げることを指示。
・できるだけ車で逃げないこと。渋滞に巻き込まれて、パニックになった運転手により、交通事故など2次災害に巻き込まれる可能性が高い。
現在も地元の第3次救急病院は大量の献血を必要としていることを発表し、数百人の人たちが献血のために並んでいる。
外務省が注意呼びかけ
■米国:ラスベガスのコンサート会場における銃撃事件の発生に伴う注意喚起
http://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcspotinfo_2017C206.html
外務省は海外安全情報を出して、事件が起きたコンサート会場など現場周辺には近づかないよう呼びかけているほか、今後アメリカへの渡航などを予定している日本人に対しても、不測の事態に巻き込まれないよう注意を呼びかけている。
アメリカに渡航や滞在している人は、最新のテロ事件情報を入手するとともに、公共交通機関や観光施設、それに、ショッピングモールなど人が多く集まる施設などを訪れる際には、周囲の状況に注意し滞在時間を短くするなど安全確保に努めるよう求めている。
この事件をまねして犯行を起こすローンウルフテロリストも居るかもしれないため、警察はコンサートやスポーツイベントへ行く際には注意を呼びかけている。
日本ではフルオート機関銃などによる乱射はないかもしれないが、ほとんどの銃砲店は重厚なシャッターなどで強盗の予防したり、強固なロッカーやチェーンなどを使って簡単に盗難されないような銃の管理を行っていない。以前からテロリストの犯行前に狙われる可能性が高いと懸念されていた。
多数の人を短時間で殺傷する武器となり得る銃器の管理はしっかりと行ってほしいと思う。
(了)
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