2014/05/25
誌面情報 vol43
Q5.地区防災計画の策定により地区間競争が生じるのではとの懸念もあります。どのようなビジョンなのかを教えてください。
地域によって、例えば沿岸部と山間部では災害の種類や頻度も変わります。金太郎飴のように似たような計画をつくる必要はありません。はじめて計画を策定する地区では、みなさんで想定される災害の特徴や危険な場所、避難所を知ることが第一歩になります。意欲的に防災に取り組んできた地区は、専門家やコンサルタントのアドバイスを受け、より多様な災害に応じた防災訓練を実施していけばいいでしょう。地区を取り巻く多様な環境に応じて、柔軟に計画できる制度になっています。競争ととらえずに、各地域の特性をとらえ参加者の問題意識に合わせた計画を策定してください。
Q6.ガイドラインで地域の活性化について記載されているのはなぜでしょうか?
地域の活性化を支えるのは人的なネットワークです。防災活動は世代を問わない共通の問題で関心を引きやすく、災害を生き抜くには1人では不可能です。助け合いが必要ですからさまざまな世代の人たちが集まります。結果的にネットワークは拡大し、緊密にもなります。普段の生活でも、この関係性が生きてきますから地域の活性化につながるはずです。最近はこのネットワークの発展が事前復興として防災や減災に役立つ点も指摘されています。
Q7.全国的に防災リーダーを担う人材不足が問題になっています。制度ができても、急にリーダーが増えるとは思えません。どのように考えられますか?
実際に地区内を歩いて、お互い話し合うことが鍵になると考えています。地区の防災活動がうまく普及しなかった問題点として、例えば意欲的に活動している地域でも会長が代わると途絶えてしまったり、積極的な活動は一部に限られ、ほとんどの人たちが消極的な参加にとどまっている例も多くありました。ガイドラインにも記載していますが、まずは地区内を歩く。特定の人に任せるのではなく、みなさんで一緒に行動して話し合い、自分ができることは何かを考える。そのやりとりの中からリーダーをみなさんが発掘していく。自発的な取り組みを支える制度ですから、ここがポイントになります。
Q8.地域の企業でBCP策定に関わった人が防災リーダーを担っていくことも考えられるのではないでしょうか。企業にとっては、地域ビジネスにつながる機会にもなると思います。
地域の住民と企業などとの連携には、大きな可能性が秘められています。企業のBCPはレベルが高いので、精通した方々は積極的に地域と連携していただきたい。ガイドラインにはBCPのエッセンスを盛り込み、防災に取り組んだことのない方にも伝わるように作成しました。
東京都の大手町、丸の内、有楽町エリアの企業を中心に設立された「東京駅周辺防災隣組」では帰宅困難者対策などに取り組んでいます。また大学が中心となっている例もあります。大規模で広域的な災害を想定し対策に取り組む「香川地域継続検討協議会」で中心的な役割を果たしているのが香川大学です。このように住民と地域の企業、NPO、学校などが連携を深め防災につなげて欲しいと思います。
Q9.ガイドラインだけでは初めて取り組むにはハードルが高いのではないでしょうか。
地区防災計画のホームページにこのガイドラインの別冊として「地区レベルの防災活動の取組事例」を掲載しています。ここで具体的な先進事例を紹介しています。地域や企業を中心に全国各地で行われているさまざまな取り組みを参考に、地域コミュニティにあった地区防災計画を立ててください。今後はモデル事業についても紹介する予定です。
内閣府地区防災計画 http://www.chikubousai.go.jp
誌面情報 vol43の他の記事
おすすめ記事
-
企業理念やビジョンと一致させ、意欲を高める人を成長させる教育「70:20:10の法則」
新入社員研修をはじめ、企業内で実施されている教育や研修は全社員向けや担当者向けなど多岐にわたる。企業内の人材育成の支援や階層別研修などを行う三菱UFJリサーチ&コンサルティングの有馬祥子氏が指摘するのは企業理念やビジョンと一致させる重要性だ。マネジメント能力の獲得や具体的なスキル習得、新たな社会ニーズ変化への適応がメインの社内教育で、その必要性はなかなかイメージできない。なぜ、教育や研修において企業理念やビジョンが重要なのか、有馬氏に聞いた。
2025/05/02
-
-
備蓄燃料のシェアリングサービスを本格化
飲料水や食料は備蓄が進み、災害時に比較的早く支援の手が入るようになりました。しかし電気はどうでしょうか。特に中堅・中小企業はコストや場所の制約から、非常用電源・燃料の備蓄が難しい状況にあります。防災・BCPトータル支援のレジリエンスラボは2025年度、非常用発電機の燃料を企業間で補い合う備蓄シェアリングサービスを本格化します。
2025/04/27
-
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
-
-
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
-
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
-
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方