南海トラフに備え情報共有を拡充

静岡県は、1976年の東海地震説発表時から県内全域が被災することを想定し、早くから全国に先駆けた防災情報システムの開発に取り組んできた。しかし、近い将来発生が懸念される南海トラフ巨大地震では、近隣県も含めさらに超広域にわたる被災の可能性が指摘されている。そのため、情報を収集するだけでなく、政府、自衛隊、市町村、消防、警察、医療機関など災害対応に係るすべての人が情報を共有でき、必要に応じて県民にも情報を提供できるクラウド型の情報共有システム「ふじのくに防災情報共有システム(通称:FUJISAN)」を2012年に開発した。

静岡県では1997年から「静岡県総合防災情報支援システム(ASSIST)」と呼ばれる災害時の情報収集システムを導入。市町村の被害状況等を県出先事務所から県庁にシステム上で報告することで情報を自動集約することができるもので、当時では全国でも先進的な技術を採用したものだった。2004年には、被害状況等を市町村や関係機関から直接県庁に報告できるシステムに変更し、GIS(地理情報システム)との連動もできるように改善した(ASSIST-Ⅱ)。しかし、情報の共有面においては課題が残ったため、2012年に第3世代システムとして「ふじのくに防災情報共有システム(通称:「FUJISAN」)」を開発した。 

「FUJISAN」の大きな特長は「救出救護に必要な情報の収集(特に発災後72時間)」「関係機関との情報共有」「情報公開手段の多様化」の3つだ(図1)。市・町、電気・ガスなどのライフライン会社、気象台、その他防災関係機関や被災現場から情報を収集し、防災情報システムによって収集した情報を集約・共有。GIS(地理情報システム)を使って地図情報とも連動させ、必要な情報については災害情報広報システムなどによって県民に配信する。 

南海トラフ巨大地震は、発生すれば県全体が被災地となる可能性があることから、被災影響がない場所にサーバーを設置するクラウドコンピューティングを活用。総務省の「平成22年~23年度地域ICT利活用広域連携事業」を利用し、総額およそ1億6000万円かけて開発した。