2014/05/25
誌面情報 vol43
南海トラフに備え情報共有を拡充
静岡県は、1976年の東海地震説発表時から県内全域が被災することを想定し、早くから全国に先駆けた防災情報システムの開発に取り組んできた。しかし、近い将来発生が懸念される南海トラフ巨大地震では、近隣県も含めさらに超広域にわたる被災の可能性が指摘されている。そのため、情報を収集するだけでなく、政府、自衛隊、市町村、消防、警察、医療機関など災害対応に係るすべての人が情報を共有でき、必要に応じて県民にも情報を提供できるクラウド型の情報共有システム「ふじのくに防災情報共有システム(通称:FUJISAN)」を2012年に開発した。
静岡県では1997年から「静岡県総合防災情報支援システム(ASSIST)」と呼ばれる災害時の情報収集システムを導入。市町村の被害状況等を県出先事務所から県庁にシステム上で報告することで情報を自動集約することができるもので、当時では全国でも先進的な技術を採用したものだった。2004年には、被害状況等を市町村や関係機関から直接県庁に報告できるシステムに変更し、GIS(地理情報システム)との連動もできるように改善した(ASSIST-Ⅱ)。しかし、情報の共有面においては課題が残ったため、2012年に第3世代システムとして「ふじのくに防災情報共有システム(通称:「FUJISAN」)」を開発した。
「FUJISAN」の大きな特長は「救出救護に必要な情報の収集(特に発災後72時間)」「関係機関との情報共有」「情報公開手段の多様化」の3つだ(図1)。市・町、電気・ガスなどのライフライン会社、気象台、その他防災関係機関や被災現場から情報を収集し、防災情報システムによって収集した情報を集約・共有。GIS(地理情報システム)を使って地図情報とも連動させ、必要な情報については災害情報広報システムなどによって県民に配信する。
南海トラフ巨大地震は、発生すれば県全体が被災地となる可能性があることから、被災影響がない場所にサーバーを設置するクラウドコンピューティングを活用。総務省の「平成22年~23年度地域ICT利活用広域連携事業」を利用し、総額およそ1億6000万円かけて開発した。
誌面情報 vol43の他の記事
おすすめ記事
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2023年9月26日配信アーカイブ】
【9月26日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:2023年7-9月四半期振り返り
2023/09/26
-
-
GX支援のアイ・グリッド 防災・BCPへの訴求を強化
企業向けグリーン電力供給のアイ・グリッド・ソリューションズは、気象災害の激甚化からレジリエンス対策のニーズが高まるとみて、防災・BCP面の訴求を強める考えです。このほど、エネルギーリスクと独立電源に対する意識を調べるため、全国の経営者にアンケート調査を実施。事業継続に加えて地域貢献への意向が強いことがわかりました。
2023/09/21
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2023年9月19日配信アーカイブ】
【9月19日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:未知のリスクに備える
2023/09/19
-
「回復」から「成長」へ 復旧フェーズを格上げ
フッ素樹脂メーカーのニッキフロンは2019 年の台風19号で本社工場機能の大半を喪失。被害と財源を見極め早期に復旧方針を決めると、主要製造ラインの迅速再開と代替生産で出荷の維持に努めました。一時は大幅に売上を落としたものの、取引先などの応援もあって、1年半後には被災前と同レベルに回復、その後は新たな成長フェーズに入っています。
2023/09/18
-
花王のリスクマネジメント改革
1890年に高級化粧石けん「花王石鹸」を発売してから130年以上にもわたり、家庭で愛用される、洗剤を中心としたさまざまな製品を世に送り出してきた花王株式会社。1999年にリスクマネジメント体制を整備した同社は、2016年にリスクマネジメントの改革に乗り出した。現在は、ERM(全社的リスクマネジメント)を展開し、将来直面するだろう未知のリスクにも対応できる体制を整えている。
2023/09/18
-
-
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方