2017/11/10
防災・危機管理ニュース

防災科学技術研究所、JR東日本、JR東海、JR西日本は10月30日、防災科研の整備・運用する海底地震津波観測網から得られる海底地震計データを鉄道事業者各社の地震防災対策へ活用することを目的とした相互協力協定を締結したと発表した。この協定に基づき、防災科研と公益財団法人鉄道総合技術研究所との共同研究成果であるデータ伝送方式を利用して、海底地震計データが鉄道事業者へ配信される。JR東日本の新幹線の一部区間では1日より地震発生時における新幹線制御への活用が始まり、JR東海、JR西日本の新幹線については、準備でき次第新幹線制御への活用を始める予定。緊急停止などに使われる。これらの取り組みは、防災科研の海底地震津波観測網データが鉄道事業者の防災対策に直接活用される初めての事例となる。
防災科研では、海域で発生する地震・津波を広域かつ多点でリアルタイムに観測するため、東日本太平洋沖を中心とする日本海溝沿いに日本海溝海底地震津波観測網(S-net)を、南海トラフ巨大地震の想定震源域に地震・津波観測監視システム(DONET)を整備・運用している。
JR3社ではそれぞれ、地震時の新幹線の安全確保のために、地震を早期検知し緊急停止する地震防災システムを導入し、陸上に設置された地震計の情報が用いられてきた。
防災科研と鉄道総研では今回、海底地震観測網の情報により地震を早期検知し列車の制御に活用することを目的とした共同研究を実施し、活用手法や情報処理・配信方法についての提案を行った。
S-net海底地震計データの地震防災対策での活用に向けて、防災科研とJR東日本、JR東海は、2014年度に海底地震計データの試験的な配信に関する協力協定を締結し、2016年度より房総沖の海域での加速度計データの試験配信を開始した。試験配信データを用いた列車の運行制御に活用する検証ができたことから、実際に地震時の列車の運行制御に活用するための安定的なデータの実配信に関して相互協力をする。これに基づき1日から房総沖の海域のS-netデータの実配信を開始し、JR東日本における新幹線の地震防災システムでの海底地震計データの活用を始める。
地震の際にDONET海底地震計データを地震防災対策へ活用することを目的としたデータ配信に向けて、今回防災科研とJR東海、JR西日本はそれぞれ相互協力協定を締結。この協定に基づき、防災科研と鉄道総研の共同研究の成果を活用して、防災科研は2018年度にかけてDONET加速度計データを配信するシステムを構築し、同年度中に試験配信を開始する予定。2019年度より新幹線の運行制御への活用を目指している。
海底地震計データ配信による新幹線の地震検知時間短縮について、JR東日本は「最大で約20秒」、JR東海は「南海トラフの場合は最大で約15秒、日本海溝の場合は最大で約30秒」、JR西日本は「最大で約10秒」としている。
■ニュースリリースはこちら
http://www.bosai.go.jp/press/2017/pdf/20171030_01_press.pdf
(了)
リスク対策.com:横田 和子
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
-
「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
東京海上グループが掲げる「防災・減災ソリューション」を担う事業会社。災害対応のあらゆるフェーズと原因に一気通貫の付加価値を提供するとし、サプライチェーンリスクの可視化など、すでに複数のサービス提供を開始しています。事業スタートの背景、アプローチの特徴や強み、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/06/11
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/10
-
その瞬間、あなたは動けますか? 全社を挙げた防災プロジェクトが始動
遠州鉄道株式会社総務部防災担当課長の吉澤弘典は、全社的なAI活用の模索が進む中で、社員の防災意識をより実践的かつ自分ごととして考えさせるための手段として訓練用のAIプロンプトを考案した。その効果は如何に!
2025/06/10
-
-
緊迫のカシミール軍事衝突の背景と核リスク
4月22日にインド北部のカシミール地方で起こったテロ事件を受け、インドは5月7日にパキスタン領内にあるテロリストの施設を攻撃したと発表した。パキスタン軍は報復として、インド軍の複数の軍事施設などを攻撃。双方の軍事行動は拡大した。なぜ、インドとパキスタンは軍事衝突を起こしたのか。核兵器を保有する両国の衝突で懸念されたのは核リスクの高まりだ。両国に詳しい防衛省防衛研究所の主任研究官である栗田真広氏に聞いた。
2025/06/09
-
危険国で事業展開を可能にするリスク管理
世界各国で石油、化学、発電などのプラント建設を手がける東洋エンジニアリング(千葉市美浜区、細井栄治取締役社長)。グローバルに事業を展開する同社では、従業員の安全を最優先に考え、厳格な安全管理体制を整えている。2021年、過去に従業員を失った経験から設置した海外安全対策室を発展的に解消し、危機管理室を設立。ハード、ソフト対策の両面から従業員を守るため、日夜、注力している。
2025/06/06
-
福祉施設の使命を果たすためのBCPを地域ぐるみで展開災害に強い人づくりが社会を変える
栃木県の社会福祉法人パステルは、利用者約430人の安全確保と福祉避難所としての使命、そして災害後も途切れない雇用責任を果たすため、現在BCP改革を本格的に推進している。グループホームや障害者支援施設、障害児通所支援事業所、さらには桑畑・レストラン・工房・農園などといった多機能型事業所を抱え、地域ぐるみで「働く・暮らす・つながる」を支えてきた同法人にとって、BCPは“災害に強い人づくり”を軸にした次の挑戦となっている。
2025/06/06
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/06/05
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方