日本学術会議の問題を広報視点で考える
第21回目 危機時の公式見解書のつくり方
日本リスクマネジャ-&コンサルタント協会副理事長/
広報コンサルタント
石川 慶子
石川 慶子
東京都生まれ。東京女子大学卒。参議院事務局勤務後、1987年より映像制作プロダクションにて、劇場映画やテレビ番組の制作に携わる。1995年から広報PR会社。2003年有限会社シンを設立。危機管理に強い広報プロフェッショナルとして活動開始。現在は企業・官公庁・非営利団体に対し、平時・緊急時の戦略的広報の立案やメディアトレーニング、危機管理マニュアル作成、広報人材育成、外見リスクマネジメント等のコンサルティングを提供。講演活動やマスメディアでのコメント多数。国交省整備局幹部研修、警察監察官研修10年以上実施。広報リスクマネジメント研究会主宰 https://m.umu.co/ssu_fdI99e9
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菅首相が日本学術会議の6人を任命しなかった問題がクローズアップされています。日本学術会議にとって、これまでスムーズに任命されていた人数が任命されなくなったことは大きな問題であることは確かで、任命のあり方だけでなく、学問の自由のあり方や税金の使われ方、大学のあり方まで議論が広がり、これまで通りにはいかなくなっています。まさに、組織にとって危機的状況であることは確かでしょう。
このように、ある日突然危機の渦中に入ってしまった場合、広報の観点から考えると、一体どうしたらよいのでしょうか。私は、公式見解書を発表することをお勧めしたいと思います。
危機時に活用したい公式見解書
本コラムで最初に解説した初動3原則を思い出してください。何か起きたときには「ステークホルダーを把握すること」「方針を策定すること」「ポジションペーパーを作成すること」と解説しました。ポジションペーパーが、この公式見解書に当たります。起きた危機を客観的に整理し、この問題にどう向き合っていくのか、その姿勢を示す文章がポジションペーパー(公式見解書)になります。
組織の存在を危うくする危機が発生した際には、常にこの初動3原則に立ち返ることが重要です。日本学術会議の場合、主要ステークホルダーは内閣府、会員、学者、学会、一般国民になるでしょう。
その上で何を危機とするかですが、今回は推薦した6名が任命されたなったことになります。これに対し、何をどこに主張する方針とするのか。今回、その方針はあまりよく見えません。
これまでのところ、10月3日にホームページに掲載されている「要望書」が唯一の公式見解書になりますので、ここから察するに、総理大臣に対して要望する、という方針しかないように見えます。また、重要な要望書の内容は次の2項目だけです。
1.2020年9月30日付で山極壽一前会長がお願いしたとおり、 推薦した会員候補者が任命されない理由を説明いただきたい。
2.2020年8月31日付で推薦した会員候補者のうち、任命されていない方について、速やかに任命していただきたい
正直、拍子抜けする内容となっています。