第126回:津波に被災した地域コミュニティーのレジリエンスを評価した事例
Sari 他 / Measuring Community Resilience to the Tsunami Disaster
合同会社 Office SRC/
代表
田代 邦幸
田代 邦幸
自動車メーカー、半導体製造装置メーカー勤務を経て、2005年より(株)インターリスク総研、(株)サイエンスクラフト、ミネルヴァベリタス(株)にて事業継続マネジメント(BCM)や災害対策などに関するコンサルティングに従事した後、独立して2020年に合同会社Office SRCを設立。引き続き同分野のコンサルティングに従事する傍ら、The Business Continuity Institute(BCI)日本支部事務局としての活動などを通して、BCMの普及啓発にも積極的に取り組んでいる。国際危機管理学会(TIEMS)日本支部理事。一般社団法人レジリエンス協会幹事(組織レジリエンス研究会座長)。環境経営学会幹事(企業の気候変動に対する「適応」研究委員会メンバー)。政府会計学会会員(社会リスク研究部会メンバー)。
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今回紹介させていただく論文(注1)はインドネシア大学の研究者によるもので、2018年12月22日にインドネシアで発生したスンダ海峡津波で被災した地域において、地域コミュニティーのレジリエンスを評価したものである。
スンダ海峡とは、スマトラ島とジャワ島との間の海峡である。ここには多くの火山島が点在しており、火山の噴火や地震が散発していることもあって災害リスクが高い地域として認識されている。2018年のスンダ海峡津波は、両島のほぼ中間に位置するアナク・クラカタウ島で発生した火山噴火によって大規模な山体崩壊が発生し、このときの土砂が海に流入し、さらに海底地すべりが発生したことによって引き起こされたものである。この津波によって、アナク・クラカタウ島の対岸にあたるパンデグラン県(Pandeglang)の沿岸部を中心に大規模な被害が発生している。本論文によると、この津波における死者は437人とのことである。ちなみに、この津波は地震によるものではなかったために地震波による早期警戒システムが使えず、津波警報が発令されなかったことも、被害が大きくなった要因だといわれている。
本論文の著者は、パンデグラン県の中で特に人口が密集しているカリタ地区(Carita District)のスカラメ村(Sukarame Village)を調査対象として、「The Integrated Concept of Community Resilience」(コミュニティーのレジリエンスに関する統合されたコンセプト)(略称ICRR)という手法を用いてコミュニティーのレジリエンスを評価している。ICRRは次の3つの観点からコミュニティーの状況を評価するようになっており、これらの評価結果のプラス側を能力(capacity)、マイナス側(制約条件)を脆弱(ぜいじゃく)性(vulnerability)として総合的な評価を行うもののようである。
(1)社会的、文化的、経済的資本(social, cultural and economical capital)
(2)災害リスクに関するガバナンス(disaster risk governance)
(3)災害を考慮した空間計画(disaster-based spatial planning)
なお、ICRRは2017年に発行された『Disaster Risk Reduction in Indonesia』という書籍(注2)に記載されているもののようであり、地域コミュニティーレベルから国家レベルにまで適用可能な、マルチハザードに対応する評価手法だそうである。ここで本稿が曖昧な表現にとどまっているのは、実は筆者がこの書籍を入手していないからである。本来はこのような重要な部分については原著をあたるべきであるが、kindle版で23,025円という高価な本であるため購入を見送った。ここは「ナナメ読み」ということでお許しいただきたい。