2014/09/25
誌面情報 vol45
東京慈恵会医科大学教授 浦島充佳
エボラ出血熱の被害が拡大している。アフリカでは過去に20回以上も流行を繰り返しているが今回は最大級の被害になっている。未承認薬の使用で一部効果が報じられているが、まだ時間を要する見通しだ。日本への影響はないのか?東京慈恵会医科大学の浦島充佳教授に特別寄稿していただいた。
2013年12月にギニアで始まったエボラ出血熱のアウトブレイク(大量発生)は、2014年8月20日の段階で既に1400人を超える死者を出している。過去のアウトブレイク(表1)と比べ最大級だ。
エボラ・ウイルスにも遺伝子の違いから複数種類が知られており、特にザイール・エボラは最も致死率が高い。今回の西アフリカで猛威をふるっているエボラは、残念ながらこの最も致死率が高いタイプのものである。
エボラ出血熱の基礎知識
■潜伏期間
2~21日、1~2週間が一般的。
■症状および診断
エボラ出血熱は、重篤なウイルス性の急性疾患で、通常は突然の発熱、倦怠、筋肉痛、頭痛などインフルエンザ様症状で発症する。その後、咽頭痛、嘔吐、下痢、発疹が出現。重症化すると、肝腎機能障害を伴う出血症状をきたし、意識障害を併発し、多臓器不全、死に至る。血液検査では血小板減少、肝臓逸脱酵素の上昇、腎機能障害を示唆する所見がみられる。
RT-PCR(リアルタイム複製連鎖反応:RNAの特定の部位だけを増幅する方法)を使えば現場でも迅速診断が可能である。培養細胞を用いたエボラウイルスの同定はbiosafety level4 (BSL4※)の研究所が必要である。よってBSL4を持たない日本では培養を行うことはできない。
※BSL=細菌・ウイルスなどの微生物・病原体等を取り扱う実験室・施設の格付け
誌面情報 vol45の他の記事
おすすめ記事
-
-
-
-
-
社長直轄のリスクマネジメント推進室を設置リスクオーナー制の導入で責任を明確化
阪急阪神ホールディングス(大阪府大阪市、嶋田泰夫代表取締役社長)は2024年4月1日、リスクマネジメント推進室を設置した。関西を中心に都市交通、不動産、エンタテインメント、情報・通信、旅行、国際輸送の6つのコア事業を展開する同社のグループ企業は100社以上。コーポレートガバナンス強化の流れを受け、責任を持ってステークホルダーに応えるため、グループ横断的なリスクマネジメントを目指している。
2025/11/13
-
リスクマネジメント体制の再構築で企業価値向上経営戦略との一体化を図る
企業を取り巻くリスクが多様化する中、企業価値を守るだけではなく、高められるリスクマネジメントが求められている。ニッスイ(東京都港区、田中輝代表取締役社長執行役員)は従来の枠組みを刷新し、リスクマネジメントと経営戦略を一体化。リスクを成長の機会としてもとらえ、社会や環境の変化に備えている。
2025/11/12
-
入国審査で10時間の取り調べスマホは丸裸で不審な動き
ロシアのウクライナ侵略開始から間もなく4年。ウクライナはなんとか持ちこたえてはいるが、ロシアの占領地域はじわじわ拡大している。EUや米国、日本は制裁の追加を続けるが停戦の可能性は皆無。プーチン大統領の心境が様変わりする兆候は見られない。ロシアを中心とする旧ソ連諸国の経済と政治情勢を専門とする北海道大学教授の服部倫卓氏は、9月に現地視察のため開戦後はじめてロシアを訪れた。そして6年ぶりのロシアで想定外の取り調べを受けた。長時間に及んだ入国審査とロシア国内の様子について聞いた。
2025/11/11
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/11/11
-
-








※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方