2014/09/25
誌面情報 vol45
2000年9月に発生した東海豪雨により、地下鉄駅構内が浸水してしまった名古屋市営地下鉄。1時間の雨量が97mmで、1日の雨量が最大534mmにも達し、名古屋市営地下鉄では、最も深いところで平安通駅が1.7m浸水した記録が残っているという。当時の反省を受け、名古屋市交通局では、現在さまざまな対策を講じている。
名古屋市臨海部の建築物などに関する防災対策を定めた条例に指定された、海に近い駅では防潮扉を設置。また、トンネル内の排水を行っているポンプ所のうち、非常時に備え予備ポンプを設置している個所では、以前は人がポンプまで行って操作しなくてはいけなかった。現在では当時の反省を受け、急激な豪雨などで地下鉄施設が浸水した場合でも、自動で予備ポンプが動くよう運転方法の見直しを行った。
そのほか、現在87ある駅のうち浸水が想定される83駅には止水板を設置。南海トラフ地震による津波も想定し、現在も増強を進めている。
局員2000人と市民45人が参加
ユニークな試みとして、名古屋市交通局は今年5月に、初めて地域住民参加の水防訓練を実施している。集中豪雨が市内域を襲い、各所で内水氾濫、河川氾濫の浸水被害が発生したという想定のもと、地下鉄全駅への情報伝達から始まり、通気口の閉鎖、駅の出入口の止水板立上げ、防潮扉閉鎖、駅周辺の避難場所掲示、トンネル内浸水を想定した列車の徐行運転などを行ったという。には名古屋市交通局全体の半分に当たるおよそ2000人が参加。市内でも防災意識が高いと言われる、西築地学区を対象に港に近い名古屋港駅で行われた訓練には、住民45人が参加した。地下鉄の水防対策について説明を受けたほか、駅構内から非常口を通り、駅の屋上まで避難する訓練を実施したという。
参加した市民からは「止水板をもう少し高くした方がいいのでは」などの厳しい意見もあったが、「防潮扉のような設備があって安心した」など総じて評価が高かったという。「施設見学と避難訓練を兼ねて実施したが、地域の方々にも地下鉄にさまざまな防水設備があるという理解を深めてもらえたのでは」と名古屋市交通局営業本部電車部運輸課主査の半田匠氏は話す。
誌面情報 vol45の他の記事
- 特集1 スーパー豪雨にどう備える?!
- 間近に迫る「首都水没」の可能性
- 地域住民とともに訓練を実施 名古屋市交通局
- 結果事象のBCPで被害を阻止 豊田通商株式会社
- 大丸有地区のビルを守る 三菱地所株式会社
おすすめ記事
-
-
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
-
「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
東京海上グループが掲げる「防災・減災ソリューション」を担う事業会社。災害対応のあらゆるフェーズと原因に一気通貫の付加価値を提供するとし、サプライチェーンリスクの可視化など、すでに複数のサービス提供を開始しています。事業スタートの背景、アプローチの特徴や強み、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/06/11
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/10
-
その瞬間、あなたは動けますか? 全社を挙げた防災プロジェクトが始動
遠州鉄道株式会社総務部防災担当課長の吉澤弘典は、全社的なAI活用の模索が進む中で、社員の防災意識をより実践的かつ自分ごととして考えさせるための手段として訓練用のAIプロンプトを考案した。その効果は如何に!
2025/06/10
-
-
緊迫のカシミール軍事衝突の背景と核リスク
4月22日にインド北部のカシミール地方で起こったテロ事件を受け、インドは5月7日にパキスタン領内にあるテロリストの施設を攻撃したと発表した。パキスタン軍は報復として、インド軍の複数の軍事施設などを攻撃。双方の軍事行動は拡大した。なぜ、インドとパキスタンは軍事衝突を起こしたのか。核兵器を保有する両国の衝突で懸念されたのは核リスクの高まりだ。両国に詳しい防衛省防衛研究所の主任研究官である栗田真広氏に聞いた。
2025/06/09
-
危険国で事業展開を可能にするリスク管理
世界各国で石油、化学、発電などのプラント建設を手がける東洋エンジニアリング(千葉市美浜区、細井栄治取締役社長)。グローバルに事業を展開する同社では、従業員の安全を最優先に考え、厳格な安全管理体制を整えている。2021年、過去に従業員を失った経験から設置した海外安全対策室を発展的に解消し、危機管理室を設立。ハード、ソフト対策の両面から従業員を守るため、日夜、注力している。
2025/06/06
-
福祉施設の使命を果たすためのBCPを地域ぐるみで展開災害に強い人づくりが社会を変える
栃木県の社会福祉法人パステルは、利用者約430人の安全確保と福祉避難所としての使命、そして災害後も途切れない雇用責任を果たすため、現在BCP改革を本格的に推進している。グループホームや障害者支援施設、障害児通所支援事業所、さらには桑畑・レストラン・工房・農園などといった多機能型事業所を抱え、地域ぐるみで「働く・暮らす・つながる」を支えてきた同法人にとって、BCPは“災害に強い人づくり”を軸にした次の挑戦となっている。
2025/06/06
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方