重ね履きは、重ねすぎて汗をかいてしまうようでは、気化熱で体は冷えていきますので、重ねれば重ねるだけ暖かくなるわけではありません。でも、重ねることで、動かない空気の層という断熱層を作るので、シルクやウールの5本指ソックスであれば、上に普通のソックスを重ねれば暖かくはなります。

シルクやウールの5本指の重ね履きとシルクやウールの普通のソックス一枚(実験するなら重ね履きと同じ厚みで比較)とどちらが暖かいかは、最終的には、その人の体温によって異なってきます。

結局のところ、足指の体温が高ければ、何をしても暖かいですし、体温自体が低ければ、何をしても寒いのです。5本指がもっとも気持ち良く感じる方もいれば、かえって寒くなる方もいます。衣類よりも普段の運動のほうが暖かさの効果を実感できるかもしれません。

いろいろ試してみて、最終的には自分の体感を信じて、自分にあった防寒対策をみつけていただければと思います。

ニーチェではなく、デカルトでいきましょう!

講演で「5本指ソックスは普通のソックスより寒いです」というと、こんな感想をよくいただいています。「暖かいはずの5本指ソックスをはいて、寒く感じていたから、どうしてなんだろうと思っていたけど、やっぱり寒かったんですね!」という「やっぱり!」という声です。体感よりも健康にいいはず、暖かいはずという情報を信じているって事ですよね。

これって心頭滅すれば火もまた涼しという精神論とか、はたまたニーチェの言葉を言い換えたものと似ていると思ってしまいます。

ニーチェ「それは『私のしたことだ』と私の記憶はいう。『私はそれをしたはずがない』と私の自負心は言い、頑として譲らない。結局、私の記憶が譲歩する」(善悪の彼岸より)
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5本指ソックスは「寒い」と私の体感はいう。「5本指ソックスは暖かいはずだ」と私の自負心は言い、頑として譲らない。結局、私の体感が譲歩する


ということで、みなさん、ここはニーチェではなく、デカルトでいきましょう。「我思うゆえに我あり」。

寒いと感じたらそれは、寒いのです。健康情報よりも自分の体感を大切にしましょう。自然を相手にする際には、自分の体感で衣類を調整できないと自分の命に関わります。自分が寒ければ、それは寒い行為なのです。普段から自分の体感と向き合う事が、災害時、寒くならない極意となります。

(了)