2020/12/24
非IT部門も知っておきたいサイバー攻撃の最新動向と企業の経営リスク
飛躍的に高まる影響度
11月、日本のゲーム会社がランサムウェア被害に遭った。要求された身代金の額も数十億円に上り、膨大な量の個人データが流出したことからも多くのメディアでこのことは報じられた。 この時、被害に遭ったIT機器は数千台ともいわれている(本稿執筆時点では、現在進行中の事件であり、今後状況が変わる可能性もあります)。
ここで一つ想像していただきたい。もし自社で、突如数千台ものIT機器が使用できなくなってしまったら、業務はいったいどうなってしまうのだろうか?
特に、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、多くの業種・業態ではこれまで以上に業務の IT依存度が高まっている。そのような状況下でIT機器が使用できなくなってしまえば、事業中断も発生し事業継続性をも脅かすものとなってしまう。
今春には日系製造業でランサムウェア被害が発生し、世界中複数の拠点で数日間にわたって操業停止を余儀なくされる事態も発生している。
リスクについて考えるとき、発生頻度とその影響度をマッピングして対策・対応を検討することが多いが、その影響度が飛躍的に高まってしまっている。もちろん悪い方に、だ。
サイバーリスクを「想定」できているか
もはや、被害に遭わないことそのものが困難であることを前述した。
万が一、被害に遭った場合であるが、専門家による何らかのアドバイスに基づき削除するよう言われていない場合は、暗号化されてしまったファイルを慌てて削除してはならない。
それは当然、このファイルが元々は私たちの大事なデータだったからということもある。そして、ファイルを削除してしまうことで、業務を復旧させるための道筋を自ら断つことにもつながり兼ねない。
この暗号化されてしまったファイルは、その後の調査にも役立つし、ファイルを復元するための手がかりとなるような情報が含まれている場合もあるからだ。具体的にはファイルを復元するための暗号化キーが一緒に保存されているランサムウェアもある。
また、身代金要求メッセージも削除しないことをおすすめする。これもまた、一部のランサムウェアではファイルを復元するための手がかりとなるような情報がここに含まれていることもあるためだ。
また、被害を最小限にとどめ、迅速な対応をしていくためにも、平時より「想定」していることが重要である。
今年も多くの国の政府機関やセキュリティー団体などから、サイバーセキュリティーに関するガイダンスやガイドラインが発行された。これらの多くが共通して謳(うた)っていることの一つは、「戦略(Strategy)と演習(Exercising)」の重要性である。 つまり、サイバーリスクへの「想定」をしておきなさいよ、ということだ。
例えば、火災が発生した際には延焼を防ぎ被害を最小限にするために消化器をここに設置しておくとか、避難経路はこの道順で行こうといった「戦略」を考える。 さらに、それらに基づいて避難訓練という「演習」も実施していく。これらは、万が一火災が発生したとしたらという「想定」に基づいているわけであるが、サイバーリスクについても同様だ。
そのためには、まずは自社にとってのリスクが何であるかを把握し、どのような影響が起こり得るかを想定して、対策や対応に取り組んでいかなくてはならない。
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