2020/12/23
インタビュー
PCログから「不正のトライアングル」をあぶり出す
DX時代のリスクマネジメント
エルテスマーケティング担当部長 江島周平氏に聞く
![](https://risk.ismcdn.jp/mwimgs/c/9/670m/img_c920c86576ec33289fb9beef717af3d7352329.jpg)
企業の情報管理や労務管理のあり方が問われている。業務環境のデジタル改革や働き方改革にともなう問題だが、テレワークの普及によって変化が一気に加速した。従来の管理方法では、企業内部の潜在的なリスクの把握がもはや困難になっているということだ。企業は今後、内部リスクをどう管理していけばよいのか、有効な手法はあるのか。「内部脅威検知サービス」を提供するエルテス(東京都)マーケティング担当部長の江島周平氏に聞いた。
ログに記憶された社員の行動からリスクを察知
――「内部脅威検知サービス」を提供されていますが、そもそも内部脅威とは何ですか。
企業がさらされている脅威のうち、外部脅威は組織の外からやって来る問題です。IT分野でいえば、例えばサイバー攻撃や不正アクセス。まさにいま多くのセキュリティーベンダーが対策しているリスクです。
これに対し内部脅威は、情報の不正持ち出しや不正操作、紛失・盗難など、組織の内側から立ち現れる問題。当社が着眼しているのはそこで、なおかつ、人の振る舞いから察知できるリスクが対象です。そしてその察知は、あくまでコンピューターログ(記録)から拾えるものに限ります。
ただし、そうはいっても、現在はログからさまざまな情報が拾えます。どういうウェブを閲覧しているのか、どういうクラウドにアクセスしているのかといった情報収集・管理の履歴、あるいはPCログと勤怠記録を突き合わせれば、その人の行動を時系列で可視化することもある程度可能になっています。
そこから何が読み取れるのかというと、人の振る舞いの変化です。よくあるケースでいえば、営業社員が機密情報の入っている社内サーバーに突然アクセスした、USBメモリを会社のPCに接続したり、フリーメールを使ってファイルを送ったりしている、など。こうした形跡が立ち現れると、内部からの情報漏えいが疑われます。
――具体的にどうやってログを調べるのですか。
「内部脅威検知サービス」の場合は、お客様である企業が蓄積されているさまざまなログ――ファイルサーバーのアクセス履歴やウェブサイトの閲覧履歴、勤怠履歴、メール履歴などを定期的に転送いただき、それを当社のAIとアナリストが分析します。
とはいえ、一つ一つのログを毎日つぶさに分析しているわけではありません。いわゆる「普通」の行動をAIに学習させておいて、これに反する明らかな「異常」行動のみを検知する。また当社はリスクの高い行動パターンをモデル化した、いわば「リスクシナリオ」を作成していますので、これと照合させて問題を検知します。
![](https://risk.ismcdn.jp/mwimgs/f/2/670m/img_f21dba7308bb8315271a6f0bea6f8bb7839168.png)
冒頭で営業社員の不正持ち出しの例をあげましたが、ログから検知できるリスクは情報管理の領域に限りません。就業時間に業務と関係ないブログやSNSで遊んでいないかとか、逆に隠れ残業や働き過ぎがないかとか、働き方の可視化も可能です。労務管理も含め、さまざまな角度から内部の問題にアプローチできるわけです。
![](https://risk.ismcdn.jp/mwimgs/3/5/670m/img_35a0c4a4076fe0672bf3018340fc0b264488769.png)
分析の結果は専用のウェブサイトを通じてダッシュボード画面でお知らせし、もしアラートが出たら、より細かな調査をして、個人ごとのリスク行動のスコアなどといっしょに報告する。そうした枠組みのソリューションを提供しています。
インタビューの他の記事
おすすめ記事
-
-
-
3線モデルで浸透するリスクマネジメントコンプライアンス・ハンドブックで従業員意識も高まる【徹底解説】パーソルグループのERM
「はたらいて、笑おう。」をグループビジョンとして掲げ、総合人材サービス事業を展開するパーソルグループでは、2020年のグループ経営体制の刷新を契機にリスクマネジメント活動を強化している。ISO31000やCOSO-ERMを参考にしながら、独自にリスクマネジメントの体制を整備。現場の業務執行部門(第1線)、ITや人事など管理部門(第2線)、内部監査部門(第3線)でリスクマネジメントを推進する3線モデルを確立した。実際にリスクマネジメント活動で使っているテンプレートとともに、同社の活動を紹介する。
2024/07/23
-
インシデントの第一報を迅速共有システム化で迷い払拭
変圧器やリアクタなどの電子部品や電子化学材料を製造・販売するタムラ製作所は、インシデントの報告システム「アラームエスカレーション」を整備し、素早い情報の伝達、収集、共有に努めている。2006年、当時社長だった田村直樹氏がリードして動き出した取り組み。CSRの一環でスタートした。
2024/07/23
-
「お困りごと」の傾聴からはじまるサプライヤーBCM支援
ブレーキシステムの開発、製造を手掛けるアドヴィックスは、サプライヤーを訪ね、丁寧に話しを聞くことからはじまる「BCM寄り添い活動」を2022年度から展開している。支援するのは小規模で経営体力が限られるサプライヤー。「本当に意味のある取り組みは何か」を考えながら進めている。
2024/07/22
-
-
危機管理担当者が知っておくべきハラスメントの動向業務上の指導とパワハラの違いを知る
5月17日に厚生労働省から発表された「職場のハラスメントに関する実態調査報告書」によると、従業員がパワハラやセクハラを受けていると認識した後の勤務先の対応として、パワハラでは約53%、セクハラでは約43%が「特に何もしなかった」と回答。相談された企業の対応に疑問を投げかける結果となった。企業の危機管理担当者も知っておくべきハラスメントのポイントについて、旬報法律事務所の新村響子弁護士に聞いた。
2024/07/18
-
基本解説 Q&A 線状降水帯とは何か?集中豪雨の3分の2を占める日本特有の現象
6月21日、気象庁が今年初の線状降水帯の発生を発表した。短時間で大量の激しい雨を降らせる線状降水帯は、土砂災害発生を経て、被害を甚大化させる。気象庁では今シーズンから、半日前の発生予測のエリアを細分化し、対応を促す。線状降水帯研究の第一人者である気象庁気象研究所の加藤輝之氏に、研究の最前線を聞いた。
2024/07/17
-
-
災害リスクへの対策が後回しになっている円滑なコミュニケーション対策を
目を向けるべきOTリスクは情報セキュリティーのほかにもさまざま。故障や不具合といった往年のリスクへの対策も万全ではない。特に、災害時の素早い復旧に向けた備えなどは後回しになっているという。ガートナージャパン・リサーチ&アドバイザリ部門の山本琢磨氏に、OTの課題を聞いた。
2024/07/16
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方