第135回:パンデミック後の将来を見据えて企業はどのように変わっていくべきか
Aon / Reprioritizing Risk and Resilience for a Post-COVID-19 Future
合同会社 Office SRC/
代表
田代 邦幸
田代 邦幸
自動車メーカー、半導体製造装置メーカー勤務を経て、2005年より(株)インターリスク総研、(株)サイエンスクラフト、ミネルヴァベリタス(株)にて事業継続マネジメント(BCM)や災害対策などに関するコンサルティングに従事した後、独立して2020年に合同会社Office SRCを設立。引き続き同分野のコンサルティングに従事する傍ら、The Business Continuity Institute(BCI)日本支部事務局としての活動などを通して、BCMの普及啓発にも積極的に取り組んでいる。国際危機管理学会(TIEMS)日本支部理事。一般社団法人レジリエンス協会幹事(組織レジリエンス研究会座長)。環境経営学会幹事(企業の気候変動に対する「適応」研究委員会メンバー)。政府会計学会会員(社会リスク研究部会メンバー)。
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世界最大級の保険・再保険ブローカーであるAonは、2021年2月に「Reprioritizing Risk and Resilience for a Post-COVID-19 Future」という調査報告書を発表した。タイトルにうたわれている通り、新型コロナウイルスによるパンデミックの後を見据えて、リスクの優先順位付けを見直し、レジリエンスを備えていくために何をすべきかを探る内容となっている。
調査は2020年10〜12月にウェブサイトによるアンケートで行われ、41カ国から500件以上の回答を得ているという。調査対象は組織のリスクマネジャー、最高リスク管理責任者(Chief Risk Officer:CRO)、最高財務責任者(Chief Financial Officer:CFO)などとなっている。
タイトルに「リスクの優先順位付けを見直す」(reprioritizing risk)とうたわれている最大の理由は恐らく、このようなパンデミックの発生を想定していた組織が非常に少なかったことであろう。本報告書によると、回答者の82%が、パンデミックもしくは何らかの深刻な健康危機(pandemics or other major health crises)を、組織が重要視するリスクのトップ10(top 10 risks on their risk registers)に含めていなかったとのことである。
なおAonは、本報告書とは別に、2020年5月に「COVID-19 Crisis Management Model」を提案しており(注1)、この中では組織としての活動を次の3つのフェイズに分けて、組織がパンデミックの危機をどのように乗り越えていくべきかが示されている。
- 反応と対応(react and respond)
- 復旧(recover)
- 再形成(reshape)
そして本報告書でもこの構成が踏襲されており、これまでどのように対応してきたか、どのように復旧に取り組んできたか、そして今後どのように組織の有り様を見直し、再形成しようとしているか、という観点で調査結果がまとめられている。調査項目は多岐にわたるため本稿でその全貌をお示しできないので、筆者が最も興味を持ったデータを紹介させていただく。