2021/02/23
アンケート結果から見直す防災とBCP
リスク対策.comが行った地震シミュレーションアンケートの結果から、災害対策のポイントを学ぶシリーズ3回目は代替要員です。下記の質問に対して、自社の取り組みがどの程度当てはまるか、ぜひ改めて組織内で考え、現状の対策を見直してみてください。このシリーズが終わる頃には、きっと自分たちの防災やBCPのレベルが向上しているはずです!
【質問5】
災害対策本部の陣頭指揮を執るはずのトップや部門長が不在です。あなたの組織では、平時から代替メンバーがしっかり決められていると思いますか?下記の1~5の中から、最も該当する番号をお選びください。
①全くそう思わない
②あまりそう思わない
③半々
④そう思う
⑤強くそう思う
さて、どうでしょう?
ちなみに、リスク対策.comが行ったアンケート(有効回答数572)の平均値は3.55と高い数値となりました。質問全体の中では、5番目に高い点数です。


代替メンバーが決まっている組織が多いのは驚きでした。普段からトップがいない中でさまざまな業務をしていることの表れかもしれません。平時の対応が災害時にも応用できる好例だと思います。しかし、災害対応は普段の業務とは異なります。災害時には、スタッフが収集した情報をもとに、トップや部門長が移り行く状況を把握し何度も意思決定しなくてはなりません。当然トップや部門長が不在な事態も起こり得ます。トップや部門長が平時から計画を理解し、意思決定ができるようにしておくことは当然ながら、トップや部門長が不在の時には、それを代替するメンバーが代わりに意思決定を行えるように訓練しておくことも重要です。
普段でも会社にいないことが多いのが経営者。災害時に社長や副社長が不在だったという話はよく聞きます。そのため、指揮命令権者を順位付けし、トップが不在の場合などに備えておくことが重要です。同様に、各部門についても代替責任者を任命しておきます。
もちろん、平時においても、多くの組織なら代替順位は決めていると思います。しかし、安易に考えておくことは危険です。災害対応の場合、どちらも不在というケースも考えなくてはいけません。
2013年に大島町を襲った台風26号の対応については、町長も副町長も不在だったことが指摘されました。どちらも出張が多いようなら最低でも3番目ぐらいまでの代替順位は考えておいた方がいいでしょう。
また、トップ以外でも、特に属人化しているような業務については代替要員を決めておくべきですし、むしろそのことがBCPのボトルネックになっている場合も少なくありません。
ところで、改めてトップについて考えてみると、災害対策本部長となるトップの役割はどのようなものでしょう? そこが明確でなければ代替メンバーを決めても、何をやっていいのか分からない、あるいは逆に災害対応の妨げになる危険すらあります。
次の問題も見て見ましょう
【質問26】
不在だった経営トップが会社に戻ってきました。あなたは、経営トッ
プがリーダーシップを発揮し、その後もしっかり災害対応に当たれる
と思いますか?
①全くそう思わない
②あまりそう思わない
③半々
④そう思う
⑤強くそう思う

結果は3.57とかなり平均点は高くなっています。それだけ、皆さんの組織ではトップが災害時でもリーダーシップを取れると感じているということでしょう。では、代替のトップでも同じようにリーダーシップを振るうことができるでしょうか?
アンケート結果から見直す防災とBCPの他の記事
おすすめ記事
-
-
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
-
「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
東京海上グループが掲げる「防災・減災ソリューション」を担う事業会社。災害対応のあらゆるフェーズと原因に一気通貫の付加価値を提供するとし、サプライチェーンリスクの可視化など、すでに複数のサービス提供を開始しています。事業スタートの背景、アプローチの特徴や強み、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/06/11
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/10
-
その瞬間、あなたは動けますか? 全社を挙げた防災プロジェクトが始動
遠州鉄道株式会社総務部防災担当課長の吉澤弘典は、全社的なAI活用の模索が進む中で、社員の防災意識をより実践的かつ自分ごととして考えさせるための手段として訓練用のAIプロンプトを考案した。その効果は如何に!
2025/06/10
-
-
緊迫のカシミール軍事衝突の背景と核リスク
4月22日にインド北部のカシミール地方で起こったテロ事件を受け、インドは5月7日にパキスタン領内にあるテロリストの施設を攻撃したと発表した。パキスタン軍は報復として、インド軍の複数の軍事施設などを攻撃。双方の軍事行動は拡大した。なぜ、インドとパキスタンは軍事衝突を起こしたのか。核兵器を保有する両国の衝突で懸念されたのは核リスクの高まりだ。両国に詳しい防衛省防衛研究所の主任研究官である栗田真広氏に聞いた。
2025/06/09
-
危険国で事業展開を可能にするリスク管理
世界各国で石油、化学、発電などのプラント建設を手がける東洋エンジニアリング(千葉市美浜区、細井栄治取締役社長)。グローバルに事業を展開する同社では、従業員の安全を最優先に考え、厳格な安全管理体制を整えている。2021年、過去に従業員を失った経験から設置した海外安全対策室を発展的に解消し、危機管理室を設立。ハード、ソフト対策の両面から従業員を守るため、日夜、注力している。
2025/06/06
-
福祉施設の使命を果たすためのBCPを地域ぐるみで展開災害に強い人づくりが社会を変える
栃木県の社会福祉法人パステルは、利用者約430人の安全確保と福祉避難所としての使命、そして災害後も途切れない雇用責任を果たすため、現在BCP改革を本格的に推進している。グループホームや障害者支援施設、障害児通所支援事業所、さらには桑畑・レストラン・工房・農園などといった多機能型事業所を抱え、地域ぐるみで「働く・暮らす・つながる」を支えてきた同法人にとって、BCPは“災害に強い人づくり”を軸にした次の挑戦となっている。
2025/06/06
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方