2021/02/27
オピニオン
栃木県足利市の山火事は2月27日現在、発生から一週間がたっても鎮火に至っていない。
今年は、国内のあちこちで山林火災が発生しているが、世界的にも、ここ数年、山林火災は猛威を振るう。Bloombergによれば、アメリカでは2020年、400万エーカー(約1万6187平方キロメートル)が山林火事に見舞われた。これは過去3年間の合計を上回る面積だという。
オーストラリアでも2019年9月から2020年2月にかけて大規模な山林火災が発生したことは記憶に新しい。その継続期間は5カ月近くに及んだ。森林火災から発生した大量の煙が都市部を覆い、呼吸困難を訴える患者が続出したそうだ。
出典:ウィキペディア
足利市の山林火災が一日も早く鎮火するとともに、火が住宅地に飛び移らないことを祈るが、山林火災に関連する地域のリスクについて調べてみた。
山林火災と土砂災害の関係
今回の足利市で避難勧告の対象地域に指定された場所を、ハザードマップ上で見ると、多くの地域が土砂災害が起きやすい地域に指定されていることが分かる。


ハザードマップは、水害や土砂災害などの危険を示したもので、山火事のリスクを示したものはないが、急峻な山が多い日本では、山林との接点は、土砂災害などのリスクが高いことが改めて分かる。
「山火事と土砂災害は関係ない」、と思われるかもしれないが、実はアメリカでは近年、山火事があった場所で土砂災害が多発しているという。
https://phys.org/news/2021-02-post-wildfire-landslides-frequent-southern-california.html
NHKワールド気象アンカーで、気象予報士の森さやか氏によれば「火事で地面が焼けると舗装された道路のように表面が固まって、水を吸い込みにくくなることがある。そのため、雨が降っても地面にたまることなく、すぐに流れ出てしまう」とのことだ。
https://news.yahoo.co.jp/byline/morisayaka/20180112-00080373/
実際、2018年1月には前年に山火事があったロサンゼルス北西部地域で大規模な土砂災害が発生し、20人以上が犠牲になった。
今も火災が続いている最中に、悪戯に不安を煽るわけではないが、今後、こうしたリスクがあることは頭の片隅にでも入れておいた方がいい。
日本は国土の3分の2が森林で、いつどこでまた森林火災が発生しても不思議ではない。「自分の裏山が燃えたら」と心配な方も多いだろうが、その際、ハザードマップを広げ、豪雨災害など地域の危険についても、調べてみてはどうか。
地域の危険施設を調べる
他のリスクについても調べてみた。
風向きによっては健康被害も懸念される。既に北関東自動車道は通行止めになっているが、避難情報が出ている地域には企業もあり、経済活動への影響が懸念される。
オピニオンの他の記事
おすすめ記事
-
-
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
-
「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
東京海上グループが掲げる「防災・減災ソリューション」を担う事業会社。災害対応のあらゆるフェーズと原因に一気通貫の付加価値を提供するとし、サプライチェーンリスクの可視化など、すでに複数のサービス提供を開始しています。事業スタートの背景、アプローチの特徴や強み、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/06/11
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/10
-
その瞬間、あなたは動けますか? 全社を挙げた防災プロジェクトが始動
遠州鉄道株式会社総務部防災担当課長の吉澤弘典は、全社的なAI活用の模索が進む中で、社員の防災意識をより実践的かつ自分ごととして考えさせるための手段として訓練用のAIプロンプトを考案した。その効果は如何に!
2025/06/10
-
-
緊迫のカシミール軍事衝突の背景と核リスク
4月22日にインド北部のカシミール地方で起こったテロ事件を受け、インドは5月7日にパキスタン領内にあるテロリストの施設を攻撃したと発表した。パキスタン軍は報復として、インド軍の複数の軍事施設などを攻撃。双方の軍事行動は拡大した。なぜ、インドとパキスタンは軍事衝突を起こしたのか。核兵器を保有する両国の衝突で懸念されたのは核リスクの高まりだ。両国に詳しい防衛省防衛研究所の主任研究官である栗田真広氏に聞いた。
2025/06/09
-
危険国で事業展開を可能にするリスク管理
世界各国で石油、化学、発電などのプラント建設を手がける東洋エンジニアリング(千葉市美浜区、細井栄治取締役社長)。グローバルに事業を展開する同社では、従業員の安全を最優先に考え、厳格な安全管理体制を整えている。2021年、過去に従業員を失った経験から設置した海外安全対策室を発展的に解消し、危機管理室を設立。ハード、ソフト対策の両面から従業員を守るため、日夜、注力している。
2025/06/06
-
福祉施設の使命を果たすためのBCPを地域ぐるみで展開災害に強い人づくりが社会を変える
栃木県の社会福祉法人パステルは、利用者約430人の安全確保と福祉避難所としての使命、そして災害後も途切れない雇用責任を果たすため、現在BCP改革を本格的に推進している。グループホームや障害者支援施設、障害児通所支援事業所、さらには桑畑・レストラン・工房・農園などといった多機能型事業所を抱え、地域ぐるみで「働く・暮らす・つながる」を支えてきた同法人にとって、BCPは“災害に強い人づくり”を軸にした次の挑戦となっている。
2025/06/06
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方