2018/02/23
防災・危機管理ニュース
低価格化へ戸別受信機の標準モデル

消防庁は22日、「防災行政無線等の戸別受信機の標準的なモデル等のあり方に関する検討会」の第3回会合を開催。災害時に地方自治体から放送される防災行政無線を屋内で聞くことができる戸別受信機の低価格化のため、機能を限定した機種の標準的モデルと仕様書例をまとめた。近く報告書として公表し、既存の各メーカーに低価格機種の開発や、新たなメーカーの新規参入を促す。
防災行政無線は、災害時の緊急情報を伝えるため、自治体が整備する無線放送。屋外拡声子局に設置した屋外スピーカーや戸別受信機を通じ、住民に直接情報を届ける。2017年3月に実施された消防庁の調査では、全国1741の市区町村のうち、戸別受信機を導入しているのは1459と全体の83.3%が導入している。
2014年の広島市土砂災害や2016年の新潟県糸魚川市大規模火災などでは、被災世帯の屋内に設置された戸別受信機からの避難放送によって人的被害が少なくてすんだ。近年の豪雨では従来の屋外スピーカーの音声が想定範囲に届かなかったり、高齢者世帯では聞き取りづらいなどの理由で、戸別受信機の整備が求められている。
一方で、自治体が購入する戸別受信機はアナログ式で1台平均2.7万円、デジタル式で平均4.6万円と高額で、普及促進の障壁となっている。検討会では個別受信機の量産化・低価格化を図るため、従来の高機能機種よりも機能を省いた廉価機種の標準的なモデルや仕様書例の作成を目指してきた。
標準的モデルでは、必須機能となる音声受信、緊急一括呼出、録音再生、停電時の商用電源から内蔵乾電池への自動切替などは従来通り保持。一方で(1)複数の種類の電池で使用できる機能(2)外部スピーカー接続(3)外部機器接続(4)文字表示(5)聴覚障害者用ランプ-の5機能を省いて低価格化につなげるよう提案した。
また既に導入している防災無線システムに戸別受信機を追加で配備する場合、親局と異なるメーカーの受信機では相互接続ができない例があるため、新たな仕様書では推奨する通信規格「ARIB(アライブ) STD」を例示したり、親局メーカー側に呼出信号のデータフォーマットなどを開示することを入札時の加点要素に盛り込んだ。
消防庁が全自治体を対象に戸別受信機の導入希望を聞いたところ、希望世帯、避難所、公共施設のほか、災害発生の確立の高い地域や自力避難が困難な世帯、不特定多数が利用するマーケット・競技場など、全体で約633万台分の希望台数があったという。低価格化により今後戸別受信機がどれだけ普及につながるか注目される。
(了)
リスク対策.com:峰田 慎二
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