2018/03/16
アウトドア防災ガイド あんどうりすの『防災・減災りす便り』
ストレスで母乳が出なくなったら、ストレスをなくす環境づくりを
だから、ストレスがない環境に身をおけば、元のとおりになると言われており、実際災害時もそのように対処されています。
そのため、母乳育児の母子の支援で最も重要なことは、避難所の場合は落ち着いて授乳できる場所の確保や、母親に優しい声をかけてくれる人の存在と言われています。
しかし、そうは言っても、母乳が元にもどるまで赤ちゃんが心配。すぐにミルクをあげたほうがいいのでは?備蓄があればそれが可能なので、ミルクや哺乳瓶の備蓄もすすめたほうがいいのでは?と思われるかもしれません。
しかし、これもまた母乳特有の現象で、考えてみたら当たり前なのですが、授乳回数が減ると母乳が本当に止まってしまうのです。必要がなくなれば止まる、それが母乳なので止まるというわけです。そうすると、ミルクを飲ませてしまうことにより、母乳育児が継続できなくなります。
災害時、母乳の人のミルクまで確保しなければならないとなると、個人の備蓄はもちろん行政の備蓄も足りなくなります。ですので、母乳育児の方は母乳を継続する支援のほうが、ミルクや混合育児の方たちのミルクを奪いあわずにすむので、誰にとってもありがたく心落ち着く支援になるのです。
母乳育児中の親への災害時の支援について医学会、医師会、助産師会が発行しているパンフやリーフには、「母乳が止まったと思ったらすぐミルクをあげましょう!」と書いているものはありません。
ミルクが悪いとかそういう訳だからではありません。どんなにミルクがいいものであったとしても、赤ちゃんの飲む回数が減ると母乳が止まってしまう仕組みだからです。そのため、各種、パンフに書かれていることは、「母親がリラックスできること」そして、「赤ちゃんが欲しがるたびに欲しがるだけあげる」ということが指導されています。
母乳をあげ続けることで、親子のホルモンの分泌が促され、通常どおりの授乳が可能になるからです。同時に、足りていないと心配になりがちですが、赤ちゃんの様子を見る指針として、おしっこやうんちがいつも通りでていれば、栄養は足りているから心配しなくていいということが指摘されています。
ということで、例え、ミルクや哺乳瓶を備蓄していたとしても、母乳が止まったかに思えても、まず最初にミルクを与えるわけではないし、勧めることもしない。勧める場合は、医療機関のアセスメントが必要と指摘されているということを広く知っておいていただければと思うのです。
「災害時の乳幼児栄養」に関する指針 改訂版 2011 年 4 月 より引用
(ユニセフ東京事務所 母乳育児団体連絡協議会 災害時の母と子の育児支援共同特別委員会) https://www.unicef.or.jp/kinkyu/japan/2011_0406.htm
岩手県大船渡市の助産師伊藤怜子さんから、東日本大震災時における避難所での母子支援の様子をお聞きしました。県立病院から避難所の仮設新生児室に入室してきた、すべての母子が母乳のみでした。避難所に別室を整え、母子が落ち着ける空間を作られたそうです。
家族が行方不明だったり、家が流されたりと想像を絶するストレスがあったことでしょう。しかし、授乳には母子がお互いに心を落ち着けるホルモンの作用もあるからか、お子さんにしっかり向き合っていらっしゃったのが印象的だったそうです。
ストレスがあってもいつも母乳が止まるわけではなく、適切なケアにより母親の体調管理が整えばミルクの備蓄も不要となることがわかります。
また、赤ちゃんの中にはアレルギーを発症させてしまうお子さんもいます。一般にミルクアレルギーと呼ばれるものは、新生児・乳児消化管アレルギーと言われています。これも、母乳でも発症例があるので、ミルクだけが悪いという話ではありません。
でも、飲んだことがないミルクでアレルギーを起こしてしまう赤ちゃんがいるのも事実なので、備蓄したミルクがあったとしても、それを初めて災害時使用できるかどうかは、母乳育児の方達には、ハードルが高いものだということも知っておいてほしいのです。災害時、医療が整っていない状況で、はじめてのアレルギー反応が起こってしまうと赤ちゃんにとって危険が伴います。
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