2018/04/05
『事業継続の問題・課題はPDCAでやっつけろ!』
■更新情報を握っている部門はどこか?
「Plan」のステップには、目標と並ぶもう一つの大きな柱があります。目標の「達成方法」です。BCP文書の策定に関わった人たちと話し合ってみると、アイデア出しもはかどるでしょう。ここでは、「特定の情報ソースを管理する部署から定期的に更新情報をもらうように声をかけておく」という方法をとることにします。
例えば、総務人事部門は社員名簿を管理していますから、社員の異動や退社、新規入社、長期休養者などがあれば、それをタイムリーに教えてもらいます。あらかじめ当部門にBCP上に記載されているリスト(「緊急対策本部メンバーリスト」や「安否確認シート/社員名簿」など)のコピーを渡して、その重要性を説明しておけば、協力が得られやすいでしょう。もっとも、BCPを管理する事務局自体、総務部門が担っていることが少なくありませんから、灯台下暗しというべきでしょうか。
一方、重要な顧客や取引先については、営業部門や仕入部門などに声をかけることになりますが、もしビジネスの相手が非常にたくさんある場合には、事前の下ごしらえが必要でしょう。災害時に納期調整や注文のキャンセルなど緊急連絡のやり取りをしなければならない重要な会社を対象に、プラオリティを割り振り、優先度の高い順にランク付けをするわけです。
その上で、例えば「重要顧客」に関しては重要顧客の新規獲得や消失に関する情報がないかどうかをタイムリーに教えてもらうように依頼します。原材料や商品・製品の仕入を担当する部署に対しても同様の措置を講じます。
また、毎月の経営会議や全体会議で「更新情報の有無」を出席者に問いかけるという、より簡便な方法もあります。忘れないように会議のアジェンダに含めておきましょう。出席者のほとんどは中間管理職以上ですから、自部門のことで変更があればすぐに分かるものと思います。
■さてActの判定はどうなる?
今回のテーマは、目標と達成方法が決まりさえすれば、比較的容易に実行(=「Do」)できるシンプルなものです。ただしPDCAの「Check」を行うためには、1年程度のサイクルを見込んでおかなければなりません。その上で、各部門に協力を要請する前と後での更新情報の集まり具合とそのBCPへの反映度合いなどを「達成指標」とみなして確認するとよいでしょう。
1年後に「Check」を通じてBCP文書類のターゲットとなる記載情報が適切に管理され、最新の状態に維持されていれば、当面は目標が達成できたものとして今回のやり方を標準的な手順に組み込めば、一件落着です。もしうまく行かなければ、改善の余地ありとみなして、再度「Plan」を組み立てるという流れになります。
なお、ここでは人事情報や顧客情報を主な「見直しの項目」の対象としましたが、念のため次の項目についても少し触れておきましょう。
(1)「初動対応手順」の見直しはしなくてよいのか?
火災や地震への対処手順は適切かといったことは、見直しというよりも演習や訓練を通じて、その妥当性や問題点を洗い出しましょう。さまざまなパターンを想定して実施してみてください。
(2)経営方針や組織の刷新でBCPの守備範囲が大幅に変わってしまった
社長の交代や経済環境への対応のために会社の経営方針(または事業方針)が変わることがあります。この場合は部分ではなく、BCP全体の見直しとなります。さまざまな変更要件を検討しなければなりませんが、これについては最後の回で述べたいと思います。
(了)
『事業継続の問題・課題はPDCAでやっつけろ!』の他の記事
おすすめ記事
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月23日配信アーカイブ】
【4月23日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:南海トラフ地震臨時情報を想定した訓練手法
2024/04/23
-
-
2023年防災・BCP・リスクマネジメント事例集【永久保存版】
リスク対策.comは、PDF媒体「月刊BCPリーダーズ」2023年1月号~12月号に掲載した企業事例記事を抜粋し、テーマ別にまとめました。合計16社の取り組みを読むことができます。さまざまな業種・規模の企業事例は、防災・BCP、リスクマネジメントの実践イメージをつかむうえで有効。自社の学びや振り返り、改善にお役立てください。
2024/04/22
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月16日配信アーカイブ】
【4月16日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:熊本地震におけるBCP
2024/04/16
-
調達先の分散化で製造停止を回避
2018年の西日本豪雨で甚大な被害を受けた岡山県倉敷市真備町。オフィス家具を製造するホリグチは真備町内でも高台に立地するため、工場と事務所は無事だった。しかし通信と物流がストップ。事業を続けるため工夫を重ねた。その後、被災経験から保険を見直し、調達先も分散化。おかげで2023年5月には調達先で事故が起き仕入れがストップするも、代替先からの仕入れで解決した。
2024/04/16
-
工場が吹き飛ぶ爆発被害からの再起動
2018年の西日本豪雨で隣接するアルミ工場が爆発し、施設の一部が吹き飛ぶなど壊滅的な被害を受けた川上鉄工所。新たな設備の調達に苦労するも、8カ月後に工場の再稼働を果たす。その後、BCPの策定に取り組んだ。事業継続で最大の障害は金属の加温設備。浸水したら工場はストップする。同社は対策に動き出している。
2024/04/15
-
動きやすい対策本部のディテールを随所に
1971年にから、、50年以上にわたり首都圏の流通を支えてきた東京流通センター。物流の要としての機能だけではなく、オフィスビルやイベントホールも備える。2017年、2023年には免震装置を導入した最新の物流ビルを竣工。同社は防災対策だけではなく、BCMにも力を入れている。
2024/04/12
-
民間企業の強みを発揮し3日でアプリ開発
1月7日、SAPジャパンに能登半島地震の災害支援の依頼が届いた。石川県庁が避難所の状況を把握するため、最前線で活動していた自衛隊やDMAT(災害派遣医療チーム)の持つ避難所データを統合する依頼だった。状況が切迫するなか、同社は3日でアプリケーションを開発した。
2024/04/11
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方