2021/10/11
防災・危機管理ニュース
10月7日(木)夜に発生した千葉県北西部を震源とする地震では、首都圏の5都県で重傷4人を含む計43人の負傷が確認された。地震の影響で交通機関は大きく乱れ、影響は翌日の通勤時間帯も続いた。日経新聞がNTTドコモ子会社のデータを使って分析した結果によると帰宅困難者の数は一時8.2万人に上る可能性があることが分かった。インフラでは、首都圏29カ所で水道管の破損による漏水被害が確認されたほか、首都圏を中心に7万5738台のエレベーターが停止し、このうちエレベーターに閉じ込められたケースが東京都や神奈川県、千葉県、埼玉県で合わせて28件あった。

火災も発生した。総務省によると、住家では、埼玉県草加市で建物火災が1件(軽傷1)、東京都では、千代田区で建物火災が1件発生した(人的被害なし)。このほか、重要施設の被害では、千葉県袖ケ浦市の富士石油(株)袖ケ浦製油所で火災が1件発生、川崎市のENEOS(株)川崎製油所でエチレンガスの漏洩が発生したがいずれも大事に至らなかった。
震度5強で大被害が出る首都圏
ところで、千葉県北西部を震源とする今回の地震発生の前日10月6日午前2時46分には、岩手県沖を震源とするマグニチュード5.9の地震が発生し、青森県で最大震度5強を観測している。女性1名がケガをしたが大きな被害は報告されていない。先月9月16日には石川県で最大深度5弱を観測する地震が発生したが、こちらも大きな被害は報告されていない。震度5強ぐらいの揺れをもたらす地震は毎年数回は起きているが、人口密度が高い都市部では、このぐらいの揺れでも大きな被害をもたらす危険があるということだ。
2011年の東日本大震災では、都内は広い範囲で震度5強を観測し、千代田区の九段会館の天井が崩落し女性2人が死亡したほか、町田市のスーパーの立体駐車場でスロープが崩落し車3台が巻き込まれ2人が死亡。さらに、江東区では、地震の揺れで金属加工会社で化学薬品トリクロロエチレンを含んだガスが充満し、吸い込んだ従業員2人が犠牲になるなど計7人が命を落とした。
ちなみに東日本大震災では、首都圏全体で、茨城県、栃木県などで震度6強を観測。被害は死者・行方不明者61名、住宅の全・半壊1万1557棟にも及び、このほか社会資本、企業の生産設備にも被害が出た。

最大2万3000人の死者が出る事態にどう備える
しかし、30年以内に70%の確立で来ると言われ続けている首都直下地震の被害は桁が違う。

揺れによる死者数は最大1万1000人。ここに、火災による犠牲者が加わり、揺れと火災を合わせた犠牲者は最大2万3000人に上るとされている。都内だけでも揺れによる犠牲者は最大6800人が想定される(東京都の被害想定では、東京湾北部地震の死者が最大で約9700人)。

内閣府の数字に基づけば、23区内での犠牲は6300人。単純に計算して、1区あたりの300人近くの犠牲者が出ることになる。
発災直後は都区部の約5割が停電することも試算されている。今回のような深夜なら、暗闇の中、あちこちで人が倒れ、うめき声がしている地獄絵のような風景になるかもしれない。そうした事態になった際にどう行動すればいいのか、被害が出ることを前提とした本格的な議論が求められる。
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