2018/05/15
防災・危機管理ニュース

東京都は14日、「救急医療対策協議会」の今年度第1回会合を開催。「地域包括ケアシステムにおける迅速・適切な救急医療について」と題した、主に高齢者の救急医療についての最終報告のとりまとめを行った。救急医療情報キットの準備やかかりつけ医などとの連携強化などの方針を示した。また「高齢者施設における救急対応マニュアル作成のためのガイドライン」もとりまとめた。今後、高齢者施設に救急対応マニュアルの作成を促す。
包括ケアシステムにおける救急医療についての最終報告では、2016年の救急搬送人員のうち65歳以上の高齢者が50.1%の34万6703人を占めており、2007年から約9万8000人増加していることを指摘。高齢者の救急搬送元は2014年の調査で「自宅・外出先など」が約84%で、そのうち在宅療養患者は約5%にとどまっている。高齢者は搬送時に情報把握や意思疎通に時間を要するほか、治療が長期化傾向にあり、さらには在宅療養生活への移行が難しく入院期間が長くなる課題もある。
今後の施策の方向性として、患者情報共有へ医療や介護の連携を強化。かかりつけ医や服薬内容などの情報を専用の容器に入れ、自宅に保管する救急医療情報キットの普及や情報更新などで、活用の改善を行う。消防の救急車の出動が多いことから、かかりつけ医療機関への移動や転院の際の病院救急車や民間救急車の活用を検討する。
高齢者施設での救急対応マニュアル作成ガイドラインでも情報の共有を重視。高齢者施設で日常的に入所者の診断をしているかかりつけ医のほか、家族の緊急連絡先もすぐに取り出せるようにしておく。入所者の病気や薬といった医療に関する情報も適宜更新し、同様にすぐ取り出せるようにする。家族とは万が一の最後の看取り時の対応も話し合っておく。
搬送手段の確認も行うよう指摘。緊急性がある場合は119番通報、ない場合は施設の車両や民間救急車など事前に決めておくことが重要とした。夜間は昼間と比べ対応が手薄になりがちなことから、勤務時間帯ごとの体制と、緊急時の連絡、指揮命令系統を決めるよう記載している。同ガイドラインは今後、都内の高齢者施設に配布される。
(了)
リスク対策.com:斯波 祐介
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
津波による壊滅的被害から10年
宮城県名取市で、津波により工場が壊滅的な被害に遭いながらも、被災1週間後から事業を再開させた廃油リサイクル業者のオイルプラントナトリを訪ねた。同社は、東日本大震災の直前2011年1月にBCPを策定した。津波被害は想定していなかったものの、工場にいた武田洋一社長と星野豊常務の適切な指示により全員が即座に避難し、一人も犠牲者を出さなかった。震災から約1週間後には自社の復旧作業に取り掛かり、あらかじめ決めていたBCPに基づき優先業務を復旧させた。現在のBCPへの取り組みを星野常務に聞いた。
2021/01/21
-
台湾をめぐる米中の紛争リスクが高まる
米国のシンクタンクCouncil on Foreign Relations(CFR)は、2021年に世界中で潜在的な紛争が起こる可能性を予測する最新の報告書を公表した。報告書は、台湾問題における米国と中国の深刻な危機を、世界の潜在的な紛争の最高レベルとして初めて特定した。
2021/01/20
-
これからの国土づくり 「構想力」と「創意工夫」で
政府の復興構想会議のメンバーとして東北の被災地を訪ね、地域の再生や強靭な国土づくりに多くの提言を行った東京大学名誉教授の御厨貴氏は当時、これからの日本の行方を「戦後が終わり、災後が始まる」と表現しました。あれから10年、社会はどう変わったのか。いつか再び起こる巨大地震をめぐり、政治・行政システムや技術環境、市民の生活や仕事はどう進歩したのか。これまでを振り返ってもらいながら、現在の課題、今後の展望を語ってもらいました。
2021/01/14