2022/01/17
Joint Seminar減災2021 第3回シンポジウム
国立研究開発法人防災科学技術研究所理事長の林春男氏と、関西大学社会安全センターセンター長の河田惠昭氏が代表を務める防災研究会「Joint Seminar減災」(事務局:兵庫県立大学環境人間学部教授 木村玲欧氏)の2021年第3回研究会が10月29日に開催され、東北大学災害科学国際研究所所長・教授の今村文彦氏が講演した。4回に分けて講演内容を紹介する。第3回は、仙台防災枠組について。
![](https://risk.ismcdn.jp/mwimgs/4/9/670m/img_490bc3f264440e0281511d42d050be93316989.jpg)
■仙台防災枠組について
2011年に東日本大震災があり、その4年後の2015年3月に国連防災世界会議(仙台会議)が開催されました(図表1)。その前回は2005年の兵庫会議で、直前にはスマトラ島沖地震と大津波がありました。そして、その前が1994年の横浜会議でした。国連の主要会議が同じ国で3回開催されることは、防災以外ではないことだと思います。メインは5日間ですが、延べ15万人が国内外から参加し、このとき採択されたのが仙台防災枠組です。日本での経験、教訓、実際の取り組みを参考にしながらこの枠組が作られました。
![](https://risk.ismcdn.jp/mwimgs/b/4/670m/img_b4267c1213a226f182edfc4ae155b621336142.jpg)
1994年横浜会議では横浜戦略が作られ、防災への関心を世界で高めることが掲げられましたが、災害が少ない地域を含め、これを意識していない地域がありました(図表2)。それを受けて兵庫行動枠組では、単なる戦略を作るだけではなく、実際にいろいろな関係者がどのような行動をして減災に結び付けたらいいかという指針が出されました。このときは私も参加し、世界での議論を垣間見ました。「Hyogo Framework for Action」は世界で非常に認知され、多くの取組・プロジェクトがこれを参考に進められたと聞いています。
![](https://risk.ismcdn.jp/mwimgs/0/b/670m/img_0b0cc5b6383cbb8fa84083e18eee860e408364.jpg)
仙台防災枠組は、防災・減災が最終目標ですが、もう一つ具体的な目標があります。防災に関係なさそうなところも含めて、多様な参加者(個人、コミュニティ、行政、企業、メディア等)が協力し、防災・減災に結び付けることです。コミュニティレベル、国家レベル、アジアや南アメリカなどの地域レベル、そしてグローバルレベルで対応を整理し、それぞれ何をしなければいけないかということをまとめています。そのための手段として、4つの優先行動を立てています。
1つ目は、災害リスクをきちんと理解することです。知識や技術だけでなく、地域にある過去の災害や将来のリスクを知ることが大事です。
2つ目は、組織の中でどう取り組むのかというガバナンスです。やはり組織で戦略を持って取り組まなければ減災はできません。
3つ目は、特に日本から主張している事前防災、事前投資です。ハード的なインフラ整備や保険の関係など、さまざまなことが事前に対応できるはずです。事前に1ドル投資すれば災害を7ドル軽減できるという研究もあります。
4つ目は、緊急対応、復旧から復興です。震災後、ただ復旧するだけではなく、ビルド・バック・ベターを目指さなくてはいけません。それを目指さなければ、また災害が繰り返され、負のスパイラルに陥ってしまいます。日本の「災い転じて福と成す」という言葉にも対応すると思います。
今回の仙台防災枠組で画期的だったのは、これらの優先行動を努力目標で終わらせないように数値指標を立てたことです。それが7つのグローバルターゲットです。人的被害や経済被害、インフラ被害などの減らすべき指標と、国際協力や情報伝達などの増やすべき指標に分けて、各国で点検しながら協力しているところです。
Joint Seminar減災2021 第3回シンポジウムの他の記事
- 東日本大震災 当時から現在の対応、そして将来に向けて(その4)
- 東日本大震災 当時から現在の対応、そして将来に向けて(その3)
- 東日本大震災 当時から現在の対応、そして将来に向けて(その2)
- 東日本大震災 当時から現在の対応、そして将来に向けて(その1)
おすすめ記事
-
-
-
3線モデルで浸透するリスクマネジメントコンプライアンス・ハンドブックで従業員意識も高まる【徹底解説】パーソルグループのERM
「はたらいて、笑おう。」をグループビジョンとして掲げ、総合人材サービス事業を展開するパーソルグループでは、2020年のグループ経営体制の刷新を契機にリスクマネジメント活動を強化している。ISO31000やCOSO-ERMを参考にしながら、独自にリスクマネジメントの体制を整備。現場の業務執行部門(第1線)、ITや人事など管理部門(第2線)、内部監査部門(第3線)でリスクマネジメントを推進する3線モデルを確立した。実際にリスクマネジメント活動で使っているテンプレートとともに、同社の活動を紹介する。
2024/07/23
-
インシデントの第一報を迅速共有システム化で迷い払拭
変圧器やリアクタなどの電子部品や電子化学材料を製造・販売するタムラ製作所は、インシデントの報告システム「アラームエスカレーション」を整備し、素早い情報の伝達、収集、共有に努めている。2006年、当時社長だった田村直樹氏がリードして動き出した取り組み。CSRの一環でスタートした。
2024/07/23
-
「お困りごと」の傾聴からはじまるサプライヤーBCM支援
ブレーキシステムの開発、製造を手掛けるアドヴィックスは、サプライヤーを訪ね、丁寧に話しを聞くことからはじまる「BCM寄り添い活動」を2022年度から展開している。支援するのは小規模で経営体力が限られるサプライヤー。「本当に意味のある取り組みは何か」を考えながら進めている。
2024/07/22
-
-
危機管理担当者が知っておくべきハラスメントの動向業務上の指導とパワハラの違いを知る
5月17日に厚生労働省から発表された「職場のハラスメントに関する実態調査報告書」によると、従業員がパワハラやセクハラを受けていると認識した後の勤務先の対応として、パワハラでは約53%、セクハラでは約43%が「特に何もしなかった」と回答。相談された企業の対応に疑問を投げかける結果となった。企業の危機管理担当者も知っておくべきハラスメントのポイントについて、旬報法律事務所の新村響子弁護士に聞いた。
2024/07/18
-
基本解説 Q&A 線状降水帯とは何か?集中豪雨の3分の2を占める日本特有の現象
6月21日、気象庁が今年初の線状降水帯の発生を発表した。短時間で大量の激しい雨を降らせる線状降水帯は、土砂災害発生を経て、被害を甚大化させる。気象庁では今シーズンから、半日前の発生予測のエリアを細分化し、対応を促す。線状降水帯研究の第一人者である気象庁気象研究所の加藤輝之氏に、研究の最前線を聞いた。
2024/07/17
-
-
災害リスクへの対策が後回しになっている円滑なコミュニケーション対策を
目を向けるべきOTリスクは情報セキュリティーのほかにもさまざま。故障や不具合といった往年のリスクへの対策も万全ではない。特に、災害時の素早い復旧に向けた備えなどは後回しになっているという。ガートナージャパン・リサーチ&アドバイザリ部門の山本琢磨氏に、OTの課題を聞いた。
2024/07/16
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方