2018/06/08
直言居士-ちょくげんこじ

企業向けに、海外赴任・出張する社員の安全を守るサービスを提供するアクサ・アシスタンス・ジャパン。同社がその経験を活かし、中小企業向けの低価格帯プランを開発。この4月から提供を始めた。アクサグループが前身の日本団体生命時代から80年以上に亘って培った商工会議所との信頼関係を生かし、120万社の会員事業所に対して、アクサグループの卓越したリスクマネジメントを活かすことで、「年会費1社あたり6万4800円かつ緊急避難時における企業の実費負担なし」というサービスを実現する。昨年7月から新社長を務める鈴木匠氏に開発の想いを聞いた。
---------
アクサ・アシスタンス・ジャパンは、2009年に誕生し、日本企業向けには、海外出張者・赴任者の現地医療手配や緊急避難のサポート業務を主力として提供してきた。
これまで同社が対象としてきたのは一部上場しているような大企業。このサービスは企業ごとに個別見積もりが必要で、規模や要望に合わせて年間数十万〜数百万円の年会費のほか、実際に緊急避難事案が起こればその都度実費がかかる。状況によっては総額で年間1千万円近いコストは大企業にとっても少なくない額だが、安全配慮義務への意識の高まりと国際情勢の不安定化の中で需要は上昇傾向にあり、100社以上の顧客企業が契約するサービスとして定着してきた。
昨年7月にアクサ生命の営業担当役員職から、アクサ・アシスタンス・ジャパンの代表取締役に就任したのが鈴木匠氏。社長就任した鈴木氏が違和感を持っていたのは、大企業が取引先の中小企業を伴って海外出張・海外進出するに際して、万が一への備えが十分ではないケースが多かったこと。「大企業の社員は救援するが、一緒に同行する中小企業は救援しないで本当に良いのか。何かソリューションを出せないか」と考えたのが、今年4月2日から提供を開始した新サービス「商工会議所の海外危機対策プラン」だ。
ノウハウ駆使し革新的価格へ
中小企業の経営者にとっては、元請けの大手企業から海外出張の同行依頼があれば、危険な地域であってもそれを承知で社員を送らざるを得ないケースもある。また、たとえその経営者が安全配慮義務を守ろうと思っても、少人数の社員の安全確保のために年間数百万円を投資することは、事業そのものの基盤を揺るがしてしまい兼ねない。「中小企業経営者にとっては、リスクを知っていても対処する術がない、というのが本音だったのでは」と鈴木社長。
自社の持つ価値をいかに多くの企業に提供できるか。昨年夏から企画を練り始めて約1年弱で今回の商品化にこぎ着けた。こだわったのは中小企業の経営者が手に届きやすく、わかりやすい価格設定。幸いグループ会社で保険事業を担うアクサ生命は、1967年以来、生命共済制度などを商工会議所会員の福利の増進に資する共済・福祉制度として引き受け、今では日本国内511の商工会議所から同制度を受託するなど、強固な信頼関係を築いてきた土壌があった。
今回のサービス実現のカギは、サービス対象を商工会議所に所属する約120万社の中小企業会員に限定したこと。膨大な会員企業をマスとして捉えることで、個別の中小企業との契約では到底難しい価格設定ができると見込んだ。もう一つのカギは、グループの卓越したリスクマネジメントのノウハウを活かしたこと。「世界最先端の知見を使い、独自のリスク算定基準を採用。フランス本社とも何度も協議して、今回かなり革新的な価格設定を実現できた」と鈴木社長は自信を見せる。
直言居士-ちょくげんこじの他の記事
- つながり支援や企業連携で災害対策強化
- 地方データセンターで災害対策と省エネ
- 災害リスクに対抗、クラウドで事業継続
- 中小企業向けに低価格「海外危機対策プラン」を開発
- 防災活動をドローンでより安全に
おすすめ記事
-
柔軟性と合理性で守る職場ハイブリッド勤務時代の“リアル”な改善
比較サイトの先駆けである「価格.com」やユーザー評価を重視した飲食店検索サイトの「食べログ」を運営し、現在は20を超えるサービスを提供するカカクコム(東京都渋谷区、村上敦浩代表取締役社長)。同社は新型コロナウイルス流行による出社率の低下をきっかけに、発災時に機能する防災体制に向けて改善に取り組んだ。誰が出社しているかわからない状況に対応するため、柔軟な組織づくりやマルチタスク化によるリスク分散など効果を重視した防災対策を進めている。
2025/06/20
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/17
-
サイバーセキュリティを経営層に響かせよ
デジタル依存が拡大しサイバーリスクが増大する昨今、セキュリティ対策は情報資産や顧客・従業員を守るだけでなく、DXを加速させていくうえでも必須の取り組みです。これからの時代に求められるセキュリティマネジメントのあり方とは、それを組織にどう実装させるのか。東海大学情報通信学部教授で学部長の三角育生氏に聞きました。
2025/06/17
-
-
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
-
「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
東京海上グループが掲げる「防災・減災ソリューション」を担う事業会社。災害対応のあらゆるフェーズと原因に一気通貫の付加価値を提供するとし、サプライチェーンリスクの可視化など、すでに複数のサービス提供を開始しています。事業スタートの背景、アプローチの特徴や強み、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/06/11
-
-
その瞬間、あなたは動けますか? 全社を挙げた防災プロジェクトが始動
遠州鉄道株式会社総務部防災担当課長の吉澤弘典は、全社的なAI活用の模索が進む中で、社員の防災意識をより実践的かつ自分ごととして考えさせるための手段として訓練用のAIプロンプトを考案した。その効果は如何に!
2025/06/10
-
-
緊迫のカシミール軍事衝突の背景と核リスク
4月22日にインド北部のカシミール地方で起こったテロ事件を受け、インドは5月7日にパキスタン領内にあるテロリストの施設を攻撃したと発表した。パキスタン軍は報復として、インド軍の複数の軍事施設などを攻撃。双方の軍事行動は拡大した。なぜ、インドとパキスタンは軍事衝突を起こしたのか。核兵器を保有する両国の衝突で懸念されたのは核リスクの高まりだ。両国に詳しい防衛省防衛研究所の主任研究官である栗田真広氏に聞いた。
2025/06/09
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方