2018/08/17
直言居士-ちょくげんこじ
企業で導入が広がるクラウド。利便性の向上やサイバーセキュリティのほか、近年は災害時に有効なバックアップとしても注目をされている。国内約1500社のデータをバックアップする、ねこじゃらし代表取締役・川村ミサキ氏に話を聞いた。
ねこじゃらしは2006年に設立。当初はファイル共有サービスを提供してきた。かつて受託を受けた作成中のホームページのデータをアルバイトが誤って消去してしまった。結果的に問題はなかったが、川村氏はバックアップの重要性を感じ、クラウドにいち早く着目。2009年にクラウドによるバックアップサービス「BackStore(バックストア)」の提供を開始した。
同サービスは元々海外ベンチャーのソフトを導入したもの。海外の企業や政府での導入実績があるほか、会社の全パソコンの状況を知られるような1人でも運用できるよう管理の簡素化がなされている。電話やメールによる専任サポートも用意し、対応する。
端末の誤操作による消去や上書きのほか、ランサムウェアなどサイバー攻撃で端末が使用不能になってもデータを保存。2011年の東日本大震災以降は災害時に有効なバックアップとしてクラウドが注目。川村氏は「サービスを開始した当初は災害のことはあまり考えていなかったが、震災後は月に100社ペースで契約が増えたこともある」と振り返る。実際に震災でサーバーが被害を受けた宮城県の団体が導入したケースもあった。
「BackStore」では企業規模や保護をする対象によって3種類のサービスから選べるようになっている。パソコンやスマートフォンなど端末データバックアップの「inSync(インシンク)」、サーバーバックアップの「Phoenix(フェニックス)」、さらには中小企業向けに「CrashPlan(クラッシュプラン)」を用意している。基本的に自動でバックアップされ、時間や手間もかからず作業を忘れる心配がない。
「CrashPlan」はパソコンとサーバーを対象としており、東京と沖縄のデータセンターで管理。1アカウント4台まで使用可。10GBの場合月2900円で利用できる。「inSync」は25ユーザーからで1ユーザーあたり月1000円~、「Phenix」は台数無制限で保存容量1TBで月5万2000円。「inSync」と「Phenix」は主にAWSに保存。データの重複がないよう、負荷を下げ効率的にバックアップする。最近では広告制作会社のADKアーツが「inSync」を導入。映像など膨大なデータをアップロード作業やデータの重複がなくバックアップができ、時間と手間を削減できたという。
「災害やランサムウェアなど、企業リスクは多様化している」と川村氏。2009年のサービス開始以降、外部にデータ流出したことはなく、「高機能でコストパフォーマンスのいい当社のサービスを検討してほしい」としている。
(了)
リスク対策.com:斯波 祐介
直言居士-ちょくげんこじの他の記事
- つながり支援や企業連携で災害対策強化
- 地方データセンターで災害対策と省エネ
- 災害リスクに対抗、クラウドで事業継続
- 中小企業向けに低価格「海外危機対策プラン」を開発
- 防災活動をドローンでより安全に
おすすめ記事
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/11/18
-
企業存続のための経済安全保障
世界情勢の変動や地政学リスクの上昇を受け、企業の経済安全保障への関心が急速に高まっている。グローバルな環境での競争優位性を確保するため、重要技術やサプライチェーンの管理が企業存続の鍵となる。各社でリスクマネジメント強化や体制整備が進むが、取り組みは緒に就いたばかり。日本企業はどのように経済安全保障にアプローチすればいいのか。日本企業で初めて、三菱電機に設置された専門部署である経済安全保障統括室の室長を経験し、現在は、電通総研経済安全保障研究センターで副センター長を務める伊藤隆氏に聞いた。
2025/11/17
-
-
-
-
-
社長直轄のリスクマネジメント推進室を設置リスクオーナー制の導入で責任を明確化
阪急阪神ホールディングス(大阪府大阪市、嶋田泰夫代表取締役社長)は2024年4月1日、リスクマネジメント推進室を設置した。関西を中心に都市交通、不動産、エンタテインメント、情報・通信、旅行、国際輸送の6つのコア事業を展開する同社のグループ企業は100社以上。コーポレートガバナンス強化の流れを受け、責任を持ってステークホルダーに応えるため、グループ横断的なリスクマネジメントを目指している。
2025/11/13
-
リスクマネジメント体制の再構築で企業価値向上経営戦略との一体化を図る
企業を取り巻くリスクが多様化する中、企業価値を守るだけではなく、高められるリスクマネジメントが求められている。ニッスイ(東京都港区、田中輝代表取締役社長執行役員)は従来の枠組みを刷新し、リスクマネジメントと経営戦略を一体化。リスクを成長の機会としてもとらえ、社会や環境の変化に備えている。
2025/11/12
-
入国審査で10時間の取り調べスマホは丸裸で不審な動き
ロシアのウクライナ侵略開始から間もなく4年。ウクライナはなんとか持ちこたえてはいるが、ロシアの占領地域はじわじわ拡大している。EUや米国、日本は制裁の追加を続けるが停戦の可能性は皆無。プーチン大統領の心境が様変わりする兆候は見られない。ロシアを中心とする旧ソ連諸国の経済と政治情勢を専門とする北海道大学教授の服部倫卓氏は、9月に現地視察のため開戦後はじめてロシアを訪れた。そして6年ぶりのロシアで想定外の取り調べを受けた。長時間に及んだ入国審査とロシア国内の様子について聞いた。
2025/11/11
-






※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方