2018/06/20
巧妙化するサイバー攻撃に備えよう!
サイバー攻撃が複雑・巧妙化するなかで、とくにその被害が国民生活に甚大な影響を与えるのが電力、交通、情報通信、金融など重要インフラ分野だ。重要インフラ運用の中核を担う制御システムは近年通信機能を備えてネットワーク化・オープン化して利便性を向上させている一方で、制御システムがサイバー攻撃を受けるリスクも一段と高まっている。2020年には東京オリンピック・パラリンピック競技大会を控えており、大会期間中に重要インフラが機能停止すれば大会運営にも大きな支障が出る。対策はどのように進んでいるのか。内閣官房内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)の参事官補佐・宮崎卓行氏に聞いた。
-----------------
2020オリンピック・パラリンピック競技大会に迫る危機
サイバー攻撃があった場合、国民生活や社会経済活動に多大な影響を及ぼす重要インフラ分野。国は早くから電力・交通・通信・金融・医療・行政などの事業者を「重要インフラ事業者」と位置づけ、2000年からサイバーセキュリティの施策を打ってきた。事業者間や官民間でサイバーセキュリティの情報共有の場には、13分野18種類4000社以上が参画する。
「重要インフラへのサイバー攻撃の脅威は、年々深刻化している。」と話すのは内閣官房内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)重要インフラグループ 参事官補佐の宮崎卓行氏。記憶に新しいのは昨年2017年5月にランサムウェア「WannaCry(ワナクライ)」によるサイバー攻撃が世界中で発生したこと。欧州では医療機関の機器に感染がみつかった。「日本では結果的には大きな被害には至らなかったが、壁を越えられていたら日本の重要インフラも停止していたかもしれない」と宮崎氏は警戒する。
日本の重要インフラ事業者に大きな試練となっているのが、これから2年後、2020年7月から開催する東京オリンピック・パラリンピック競技大会だ。世界の注目を集めるオリンピック・パラリンピック競技大会。これまで2012年ロンドン、2016年リオ、2018年平昌の各大会では、公式サイトや関連組織へのDDoS攻撃、大会の機密情報を狙う標的型攻撃などさまざまな脅威に晒されてきた。2020年東京大会でも同様の脅威が存在し、重要インフラが標的になる可能性は十分ある。「サイバー攻撃に関しては、まだ情報や経験値、専門知識を持った人材が足りないのが現状」と宮崎氏は認める。もしオリンピック・パラリンピック競技大会期間中に、会場の電力停止や、会場までの交通機関が麻痺して、大会運営が妨げられれば、大混乱をきたす。
重要インフラ事業者が運用する制御システムは、クローズドなシステムで、独自のハードウェア、ネットワーク・プロトコル、OS・ソフトで構築・運用されており、サイバー攻撃を受けにくいとされてきた。だが近年はクラウドやIoTの普及により、制御システムでも標準プロトコル・汎用製品で構築・運用されるようになり、サイバー攻撃の脅威が高まりつつある。日本では従来型のクローズドな制御システムを採用している事業者が多いため、大きなサイバー攻撃の事例はないが、「内部社員や外部委託の整備員等を通じて内側から攻撃にあう危険性もある。自分たちは大丈夫だと安易に考えている環境ほど危険な状態はない。」と警告する。
巧妙化するサイバー攻撃に備えよう!の他の記事
- 社内チャットをメールと一体で提供
- 急ピッチで進む重要インフラのサイバー攻撃対策
- EU個人データ保護法「GDPR」施行
- システム切り替えの自動化ソリューション
- LINE、ヤフーやアマゾンなどと啓発
おすすめ記事
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月16日配信アーカイブ】
【4月16日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:熊本地震におけるBCP
2024/04/16
-
調達先の分散化で製造停止を回避
2018年の西日本豪雨で甚大な被害を受けた岡山県倉敷市真備町。オフィス家具を製造するホリグチは真備町内でも高台に立地するため、工場と事務所は無事だった。しかし通信と物流がストップ。事業を続けるため工夫を重ねた。その後、被災経験から保険を見直し、調達先も分散化。おかげで2023年5月には調達先で事故が起き仕入れがストップするも、代替先からの仕入れで解決した。
2024/04/16
-
工場が吹き飛ぶ爆発被害からの再起動
2018年の西日本豪雨で隣接するアルミ工場が爆発し、施設の一部が吹き飛ぶなど壊滅的な被害を受けた川上鉄工所。新たな設備の調達に苦労するも、8カ月後に工場の再稼働を果たす。その後、BCPの策定に取り組んだ。事業継続で最大の障害は金属の加温設備。浸水したら工場はストップする。同社は対策に動き出している。
2024/04/15
-
動きやすい対策本部のディテールを随所に
1971年にから、、50年以上にわたり首都圏の流通を支えてきた東京流通センター。物流の要としての機能だけではなく、オフィスビルやイベントホールも備える。2017年、2023年には免震装置を導入した最新の物流ビルを竣工。同社は防災対策だけではなく、BCMにも力を入れている。
2024/04/12
-
民間企業の強みを発揮し3日でアプリ開発
1月7日、SAPジャパンに能登半島地震の災害支援の依頼が届いた。石川県庁が避難所の状況を把握するため、最前線で活動していた自衛隊やDMAT(災害派遣医療チーム)の持つ避難所データを統合する依頼だった。状況が切迫するなか、同社は3日でアプリケーションを開発した。
2024/04/11
-
-
組織ごとにバラバラなフォーマットを統一
1月3日、サイボウズの災害支援チームリーダーである柴田哲史氏のもとに、内閣府特命担当の自見英子大臣から連絡が入った。能登半島地震で被害を受けた石川県庁へのIT支援要請だった。同社は自衛隊が集めた孤立集落や避難所の情報を集約・整理し、効率的な物資輸送をサポートするシステムを提供。避難者を支援する介護支援者の管理にも力を貸した。
2024/04/10
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月9日配信アーカイブ】
【4月9日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:安全配慮義務
2024/04/09
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方