上層部の失言がなくならない理由
戦術的な対応ではなく戦略的な取り組みを

大杉 春子
コミュニケーション戦略アドバイザー 。民間企業・地方自治体・省庁などのパートナーとして、PR戦略の策定から広報物の制作監修まで幅広い支援を行う。日本でのERC普及を目指し、2020年に日本リスクコミュニケーション協会を設立し、国内外の専門家を束ねる。リスク管理からBCP/BCM、危機管理広報までを網羅した新たなリスクコミュニケーションのスキルを持った『リスクコミュニケーター』の育成を展開。
2022/04/27
組織の生産性を上げるエンタープライズ・リスクコミュニケーション
大杉 春子
コミュニケーション戦略アドバイザー 。民間企業・地方自治体・省庁などのパートナーとして、PR戦略の策定から広報物の制作監修まで幅広い支援を行う。日本でのERC普及を目指し、2020年に日本リスクコミュニケーション協会を設立し、国内外の専門家を束ねる。リスク管理からBCP/BCM、危機管理広報までを網羅した新たなリスクコミュニケーションのスキルを持った『リスクコミュニケーター』の育成を展開。
最近、大手飲食チェーンの上層部による「不適切発言」や、消費者への「お客様相談室の高圧的な態度」、飲み物の中に「虫(異物)混入」など、さまざまな不祥事が各メディアで取り上げられ、炎上による企業ブランドのイメージ毀損(きそん)が相次いでいる。
シエンプレ・デジタル・クライシス総合研究所の調査によると、炎上で購入や利用を停止・再検討する人は約3割(27.2%)に上り、炎上後の対応を確認する人は67.9%、対応次第で良い印象を受ける人が37.7%であった。
また、イギリス大手オンラインショップの、小売業者データを用いた調査(ウォートン顧客分析研究論文)からは、否定的なレビュー(5点満点で星3つ以下のレビュー)を消費者がみた場合、購入確率は平均51.4%も低下することが判明した。
最近起きた炎上事例は、いずれも消費者や一般の方によるSNS投稿により事態が発覚し、炎上が広がるという経緯をたどっている。
SNSの利用者が増加する中、人類総メディア時代が到来した現代において、企業ブランドのイメージ低下を防ぐための施策は、もはや必須のものになりつつある。
しかし依然として企業の「炎上」は増加傾向にあり、対応に頭を悩ませている担当者は後をたたない。これは何故だろう?
この図はリスク管理業務の位置を図解で示したものだ。縦軸が業務の重要度、横軸が業務の緊急性を示している。右上の「緊急で重要なこと」は、会社が特別に仕掛けをしなくても自動的に行う。そして残念ながら、私たちの業務は左下の「緊急でない、重要でない」ことと、右下の「緊急で重要でない」ことがほとんどを占めている。
「不祥事」や「炎上」を防止するリスク管理の施策として、社員の意識向上や価値観をアップデートしてもらうために、下記のような取り組みをしている企業も少なくない。
・SNS研修
・コンプラ研修
・危機管理広報研修
しかし、これらのリスク管理の施策はいずれも、左上の「緊急じゃないけど重要」に位置する業務で、特別にルールや時間を決めて取り組まないと進まない領域に位置している。リスク管理の施策がなかなか進まない大きな要因はここにある。
この領域は、世界的ベストセラー『7つの習慣』のいうところの第2領域と親しい。この「今すぐやらなくても困らない(緊急ではない)」活動は生活や仕事の質、仕事の生産性に大きく影響するとされている。企業もまた、企業価値向上や生産性を上げるためには、この第2領域に位置する施策を行う必要がある。
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