2019年台風15号、千葉県の停電地域で移動型独立電源「N3エヌキューブ」初号機が災害支援活動

環境・IT・医療・防犯・観光・ESG――。
価値生む防災で悪条件をプラスに

ベアリングシェアトップクラスの精密機器メーカーNTN(大阪府大阪市、鵜飼英一社長)は、2018年の創業100年を機に、次の100年を見据えた自然エネルギー商品事業を2016年からスタート。機械の回転や動力の伝達を支える独自技術を生かして高性能の小型風車を開発、そこに太陽光パネルと蓄電池を組み合わせ、グリーン電力の独立電源として商品化した。ESG投資に対する関心の高まりや政府の国土強靱化政策を追い風に、ここ1~2年で急速に導入実績を伸ばしている。新たな事業領域に挑む同社の取り組みを聞いた。
写真:特記なきものはNTN提供

NTN
大阪府

台風15号停電地域で災害支援

NTNの「N3エヌキューブ」が最初に活躍したのは2019年9月、台風15号で大規模な停電に見舞われた千葉県南部だ。鋸南町の要請を受け、三重県の研究所から12フィートサイズの初号機を出動。10tトラックに積み込んで東名高速道路を搬送し、同町に続いて富津市でも支援活動を行った。

輸送用・建築用のコンテナに0.5kWの風力発電と1.1~2.2kWの太陽光発電、8.8kWh以上の蓄電池を搭載した移動型独立電源。10・12・20フィートの3サイズがあり、陸海どちらからも運べてどこへでも設置できる。かつ、コンテナの内部空間を多目的に使うことが可能だ。

「鋸南町に入ったとき、周囲は完全な停電。住民の方が一番困っていたのは携帯でした」と、NTN自然エネルギー商品事業部技術部の赤川充氏は振り返る。「たまたま大手キャリアの移動通信アンテナが来ていたけれど、そもそも、みな携帯の電池がない。そこに電源が来たことで、非常に喜んでもらった」

 

台風15号では千葉県内で最大64万戸あまりが停電、完全復旧まで19日間を要した。電力復旧の重要性が再認識されるとともに、グリッド電源喪失時のバックアップ体制があらためて問われたかたちだ。

「このとき我々が果たしたのは、停電から復電までの期間をつなぐ役割。公助の求めに応じ、初動時の最も困難な自助・共助の局面を支援するサービスを展開した。これを機に、活動が本格化していった」と、同じく自然エネルギー商品事業部長の梅本秀樹氏は話す。