2022/09/06
事例から学ぶ
富士山噴火も視野に入れたオールハザード型へ

全国にパチンコホールを展開するダイナム(本社、東京都荒川区)は、地震災害だけでなく、富士山噴火や大規模水害などによる首都機能喪失も視野に入れたBCP見直しを進めている。東日本大震災では、多くの店舗が被災し、津波による被害も甚大であった。新型コロナ対応では徳島県と高知県をのぞく全都道府県で店舗の休業が余儀なくされた。こうした危機に再び襲われても、従業員と顧客の命を守りながら、地域に必要とされる会社を目指し、資金面も含めたBCPを再構築している。2回に分けて同社のBCPへの取り組みを紹介する。
■起点となった東日本大震災
同社は、沖縄を除く全国46都道府県にパチンコホールを展開する業界大手。2022年7月時点で396店舗を有し、従業員はパートを含め7643名(正社員4284名/パート3359名)いる。
リスクマネジメントの取り組みを本格化させたのは2011年の東日本大震災以降。それまでも、パチンコ店特有のリスク対策は行っていたが、リスクマネジメントを専門に行う部門はなかった。「東日本大震災を機に、災害対策をはじめ、これまでも対策してきたさまざまなリスクについて、事業部として一体的に取り組むことにしました」と同社リスク管理部の阿部到部長は説明する。
東日本大震災では、地震の揺れによる被害に加え、宮城県東松島市では、津波に店舗が飲まれるなど、東北地方を中心に甚大な被害を受けた。当時351店舗あったうち132店舗が営業休止を余儀なくされた。震災後も、計画停電により営業活動は制限された。
当時、対策本部会議は延べ55回開かれ、被害状況の確認方法や、本部の支援の在り方が課題になった。対策本部で使われた資料は、分厚い冊子にまとめられ、必要な部署ごとに保管され、今も検証資料として引き継がれている。


それまでも安全が軽視されていたわけではないが、震災以降は「従業員と顧客の命を守ることが、経営方針の中でも最重要視されている」と阿部氏。リスク管理部でリスク対策担当マネジャーを務める後藤亘氏は「経営としては、従業員の命に影響を与えるような事態が発生していないかという情報は何より大事で、必要に応じて即会議や委員会が設けられ、必要な部署に必要な指示が出せる状態になっています」と補足する。この迅速な情報共有と関連部署の足並みがそろった対応が同社の危機管理の礎を築いている。
事例から学ぶの他の記事
おすすめ記事
-
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/09/16
-
-
ラストワンマイル問題をドローンで解決へBCPの開拓領域に挑む
2025年4月、全国の医療・福祉施設を中心に給食サービスを展開する富士産業株式会社(東京都港区)が、被災地における「ラストワンマイル問題」の解消に向けドローン活用の取り組みを始めた。「食事」は生命活動のインフラであり、非常時においてはより一層重要性が高まる。
2025/09/15
-
-
機能する災害対応の仕組みと態勢を人中心に探究
防災・BCP教育やコンサルティングを行うベンチャー企業のYTCらぼ。NTTグループで企業の災害対応リーダーの育成に携わってきた藤田幸憲氏が独立、起業しました。人と組織をゆるやかにつなげ、互いの情報や知見を共有しながら、いざというとき機能する災害対応態勢を探究する同社の理念、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/09/14
-
-
-
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/09/05
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方