現在は新興住宅街となり一戸建ての住宅が整然と並ぶ。千歳地区の約7割が最近移り住んだ若い世代だという。崔氏が自治会長を務める千歳1丁目だけでも57軒のうち古くから住んでいるのは15軒ほどだ。

一般的に新たな住民は地域活動への参加に消極的だが、千歳地区では子どものイベントなどと併せて新たな住民と地域コミュニティとを結びつける取り組みが活発に行われている。2005年に千歳公園と防災支援の拠点となる地区センターが完成すると、夏には盆踊りを復活させ、1年を通じて、餅つき大会や焼肉などのイベントを開き、自治会ぐるみで積極的に交流の機会を増やしてきた。

親子参加で行った訓練の様子

220人が参加の防災訓練

昨年の11月16日に千歳公園で行われた3回目の防災訓練では「命のリレーは住民と共に」のテーマを掲げ、子どもから高齢者まで220人が参加した。神戸市消防局の協力で放水訓練を行い、震度体験車も用意し、人形を使った応急処置とAEDの講習が開催された。新しい住民の参加を促すために、チラシやポスターで告知するだけでなく、自治会役員が中心となり各家庭を訪問した。周辺の学校にも呼びかけ、地区外の中学生も訓練に加わったという。

「千歳公園には100トンと400トンの防火水槽が設置されていて、放水訓練をすると子どもが喜ぶ。子どもを呼び込めば親はついてくる。子どもを呼び込む目玉商品が重要」と住民を集めるコツを崔氏は語る。

千歳公園は震災復興土地区画整理事業で地域住民の強い要望により防災拠点として整備された。災害対策のためにさまざまな設備が置かれている。収納されているシートを下ろすとシェルターになる屋根付きベンチ。公園内には井戸が3カ所と仮設トイレを設置するための配管が5カ所ある。高齢者や障害者向けの仮設トイレも準備している。防災倉庫の中には発電機、消火ポンプや救護用品などの資機材が備えられている。千歳公園の東側と南側で接する道路は、建物が倒れても無事に避難できるよう14mもの道幅が確保された。公園の四隅にはスピーカー付ソーラー照明が設置され、隣接する千歳地区センターからの放送が流れるようになっている。「ここまで整備されている公園は他には見られないだろう」と崔氏は語る。

自治会の役員には30代から70代までの各世代が顔をそろえ、若い世代が確実に地域防災に根付いている。年間2400円の自治会費だけではさまざまなイベントを実施するには到底足りないが、自治会で新聞紙を回収するなど工夫を凝らしている。「イベントをきっかけに顔見知りになり、あいさつを交わせる日常的な近所づきあいが地域の団結を強め、それが助け合いの防災につながる」と崔氏は語る。