2015/07/10
C+Bousai vol3
防災活動でマンションの価値向上
防犯から始まったコミュニティ活動
ソフィアステイシアに住民が入居を開始したのは2003年。住民によるコミュニティづくりは、マンションの防犯から始まった。「入居開始してから半年間は、まだ住民がお互いの顔や名前がわからないこともあり、空き巣や車上狙いが絶えなかった。そのため、まず防犯コミュニティづくりを開始した。住民同士のあいさつ運動や来訪者に対しての声かけ運動から始め、名簿づくりより先に住棟ごとに住民の集合写真を撮り、全戸に配布することでお互いの顔を覚え、顔の見える関係を作った」(安部氏)。
犯罪者は、犯行に及ぶ前にターゲットを絞り込むため、必ず「下見」に侵入するという。その時に住民に「どなたをお訪ねですか」と声をかけられると、犯行を諦める傾向が強い。運動が定着した1年後には、空き巣被害はほとんどなくなっていたという。

「命より大事な個人情報はない」。
住民の居住者台帳を作成
防犯コミュニティが成功を収めた後、2004年に安部氏らはマンション独自の自治会を設立するための「自治会設立準備委員会」を結成。2005年に住民100%加入の自治会を設立し、同時に自主防災会を立ち上げた。特徴的な取り組みとしては、自然災害やマンション火災のほか、住民が遭遇する可能性がある事件や事故、急病などから住民を救う目的で、自治会会則のなかに細則を設け、「居住者台帳」を作成した(表参照)。この台帳には住民が災害や事故、急病などで意識を失い、自分の状況を申告できないような場合でも速やかに救急救命活動が行えるよう、世帯別、個人別に、詳細な医療情報も含めて自己申告する方式を採用している。過去には、実際に単身高齢者の救急救命に役立ったこともあるという。深夜1時ころに救援要請があり、安部氏と民生委員が駆けつけて応急手当てを施しながら救急車を手配。要請者は居住者台帳で詳細な医療情報を申告していたため、一時は集中治療室に入ったものの一命をとりとめることができたという。
通常は、個人情報保護法により同じマンション内でも居住者の詳細な情報を集めることは難しいとされている。それでも安部氏は各居住者に対し、「災害や緊急事態が発生した時に、台帳を届けておくことで自主防災会から助けてもらえる確率が高まる」「命より大事な個人情報はない」と説得し、現在では全世帯の96%が名簿を届け出ている。特に災害時要援護者や一人暮らしの高齢者に関しては100%の情報を把握しているという。
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