2015/07/10
C+Bousai vol3
防災活動でマンションの価値向上
マンションのトイレ継続計画
各家庭での備蓄のほかに、自主防災会ではマンション全体で使用する防災器材(避難誘導、救助・救護用具、AED、発電・照明、共同炊事用具など)のほか、マンション内の臨時避難所に避難した居住者(傷病者、要援護者、帰宅困難世帯の幼児、津波浸水被害を受けた居住者など)向けの食料、飲料水、簡易トイレ、寝具なども備蓄している。これほどまでにマンション全体で備蓄していながら、さらに家庭内の備蓄を呼びかけるのは、例えば津波浸水被害を受けた場合、漂着がれきを撤去し、消毒、清掃を済ませた後でなければ共同炊事体制がとれないためだ。共同炊事が始まったら、食材は各家庭の備蓄食料から持ち寄ることにしている。
さらに徹底しているのは、備蓄トイレに対する考え方だ。よこすか海辺ニュータウン連合自治会会長でもあり、ソフィアステイシアMLCP※策定委員会委員長の安部俊一氏は「1日や2日は食べなくても水さえあれば餓死することはない。しかしトイレを我慢することは場合によっては命取りになる」と話す。
ソフィアステイシアでは、震度5弱以上の地震が発生した場合、排水系統の点検が全て完了するまではトイレ、台所、風呂などの生活排水の使用を全面禁止にしている。これは仮に一時的に排水が利用できたとしても、地震により配管がずれたりしていた場合には下層階の住居に水漏れなどの被害をもたらす恐れがあるからだ。また、同マンションは津波警戒区域内にあるため、災害用トイレは津波災害リスクが去るまで設置しないとしている。
「大地震や津波が発生した場合、最初の3日間は家庭内で備蓄してもらった簡易トイレなどでしのいでもらう。津波被害のリスクが去った後に、マンションで備蓄したトイレを設置する。現在、8000回〜1万回対応の大型トイレを4基、マンホール直結タイプを10基整備済みだ。これで住民1000人、1日あたり8000回のトイレ需要に対し、10日間から2週間対応することができる」と安部氏は胸を張る。トイレットペーパーは各家庭で備蓄し、災害用トイレを使用するたびに各自持参するものとするほか、夜間はトイレ警備班が災害用トイレを巡回警備、部外者のトイレ利用を原則禁止にするなど、MLCPのなかでトイレ対策を最重要項目にとりあげ、徹底した対策を施している。
ソフィアステイシアの取り組みは災害対策には理想的と言えるが、通常のマンションではこのように住民の防災意識を上げるのは難しい。なぜこれほどまでに質の高い防災計画を策定することができたのだろうか。そこには入居当初から12年かけて築き上げた、住民同士のミュニティ活動があった。
※MLCP…Mansion Life Continuity Plan=マンション生活継続計画
C+Bousai vol3の他の記事
- 県境を越えて防災と地域活性化
- 巻頭インタビュー| 地区防災計画がつくる新たな共助社会 話し合う「場」を育てる
- 防災活動でマンションの価値向上 (よこすか海辺ニュータウン「ソフィアステイシア」)
- 原発被害を乗り越え未来に繋ぐ (福島県桑折町半田地区)
- 史上最悪の洪水に備える 避難基準を独自に設定 (長野市長沼地区)
おすすめ記事
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2026/08/05
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2026/08/04
-
-
-
-
令和8年熊本地震 猛暑の被災地で熱中症を避ける
最大震度7を記録した令和8年熊本地震。熊本県内では400超の避難所が開設され、約9千人が避難している(29日時点)。真夏の避難生活は、熱中症の危険性を確実に高める。しかもこれからは、猛暑・酷暑下での復旧活動が本格化し、多くの人々が被災地で活動する。現地で熱中症をどう防いだらいいか。熱中症と災害医療に詳しい、さいたま赤十字病院高度救命救急センターの席 望医師に対策を聞いた。
2026/07/30
-
令和8年熊本地震 広がるデマ、どう見分ける?SNSとの向き合い方
28日に発生した最大震度7を記録した熊本地震では、早くも豪華寝台列車「ななつ星」が脱線したなどのデマ情報が広く拡散された。災害のたびに、広くSNSで拡散される情報にどう向き合えばいいか。デジタル空間の情報分析を専門とする Japan Nexus Intelligence の竜口七彩氏に聞いた。
2026/07/29
-
-
事例研究で有事に備え、組織の体質改善で形骸化を防ぐ
組織レジリエンスの強化やサイバーセキュリティーの向上、サプライチェーンの強靭化など、危機管理やリスク管理担当者が関与する領域は年々拡大している。変化する社会状況にあわせ、担当者はどのように学び、備え、対応することが求められるのか。森総合研究所代表の森健さんは、自治体と企業で危機管理担当者としての経験を積み、現在はコンサルタントとして、企業や団体の危機管理の支援を手がけている。自身の経験を踏まえ、危機管理の担当者にどうアドバイスしているのか、話を聞いた。
2026/07/27
-






※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方