線状降水帯が広範囲で次々と発生し各地に水害をもたらした(イメージ:写真AC)

水害被災地の現状

令和5年台風2号が梅雨前線に湿った空気を大量に送り込むことにより、6月3日・4日に四国、近畿、中部地方を中心に線状降水帯が発生、大雨をもたらした。被災された皆様に心からお見舞いを申し上げます。

住宅地で床上床下浸水、川の氾濫、道路の冠水、土砂崩れなど広範囲に多くの被害が出てしまった。

2019年の東日本台風による洪水の被害

土砂崩れで道路が使えなくなった場合、集落の孤立を招き、避難支援が滞るために最優先で土砂の撤去作業を行う。しかし、土中に雨の量が多い時に強い雨が降ったり、その雨が収まった後でも土砂災害が発生したりする可能性がある。復旧活動をされている方々も発注者も、くれぐれも慎重に安全第一で作業をされるようお願いしたい。

床上床下浸水の被害に遭われた方々は呆然とされるだろう。そして、できるだけ急いで片付けようと考えるかもしれない。しかし、心身が疲れているときに、泥出しや家具の処理など辛い作業をすると、ますます疲れがひどくなる。

こういうとき、支援者が「片付けは少し落ち着いてからで大丈夫です。近所の方と話をされながら、ゆっくりと進めましょう。急いでやるべきことは、家の四方から被害の写真を撮り、証拠を記録することですよ」などと伝えることが大事だ。

一人暮らしの高齢者などは被災後の片付けにも大きな負荷がかかる(イメージ:写真AC)

また、自宅の片づけは原則として自助で行う必要があるが、高齢者の一人暮らしではとても大変だ。一方で、高齢者は人に迷惑をかけたくないと、支援を求めない傾向がある。そこで自治会、民生委員、社会福祉協議会、地域包括支援センター、福祉事業者などが、安否確認を兼ねて訪問し「ボランティアが駆けつけてくれますので、遠慮なく支援をお願いしてください」と話していただきたい。

メディアの役割

以前は水害で死者、行方不明者が出ると、自治体の避難指示等の発令タイミングが適切だったかどうかをメディアが取り上げることが多かった。確かに制度上は自治体の首長が避難指示の発令権者であるが、実際には専門家ではない。補佐する防災危機管理部署の職員もほとんどローテーション勤務で、やはり専門家ではない。

そのためタイミングを外すこともよくあったが、近年は地方気象台や国土交通省河川事務所などの専門機関が積極的に自治体と連携するため、警報発令タイミングの問題は少なくなっている。

私は、いつもメディアの方々には被災者、被災自治体支援の観点からの報道をお願いしている。災害直後は、自治体は事前の対策がどうだったかなど検証している場合ではない。二次被害を防ぎ、被災者への適切な支援、復旧活動を早期に実施するため、全力を尽くさなければならないからだ。

万が一、メディアが自治体の適切でない事例をあげつらえば、自治体と住民の信頼関係が弱くなる。それは、住民の協力が得にくくなり、復旧復興の遅れに直結しかねない。検証は、ある程度災害対応が落ち着いた段階で、しっかりと行えばよい。