一般社団法人UTM グリッド推進センター(長野県松本市/代表理事: 宮澤重義) は7月19日、長野県塩尻市(塩尻市長:百瀬敬) と、大規模災害/国民保護事案等の応急時におけるUTM グリッド地図供給に関する災害時協定を全国で初めて締結したと発表した。

UTM (ユニバーサル横メルカトル) グリッドとは、わずか数字6桁だけで地理上の位置を特定できる手法(1:25,000 縮尺地図の場合) で、「緯度経度」と比較すると記憶し易く無線・電話等での伝達が容易な特長がある。陸上自衛隊の地図に標準実装されているだけなく、海外ではアウトドア地図等に標準で表記されるグローバルスタンダードな位置特定手段となっているという。東日本大震災の際には、関係機関間における位置の特定・位置情報の共有が困難だったことをきっかけに、国土地理院の地理院地図に実装されるようになり、内閣府官房国土強靭化推進室が毎年発行する国土強靭化年次計画では「関係省庁の災害対応業務、関係機関における情報共有・利活用、UTM グリッド地図の活用について、標準化を推進する」と、災害時における位置情報の共有についての標準化が推進されている。

一般社団法人UTMグリッド推進センターは、大規模災害・山岳遭難等の対策における位置情報の標準化を推進するために2020 年に設立した非営利型一般社団法人で、全国の自治体の危機管理部門/消防関係機関/企業リスク管理部門等のUTM グリッド地図制作や運用支援を行っている。一方、塩尻市ではこれまで、塩尻市全図と陸上自衛隊が運用する地図の図郭に合わせた9図郭のUTM グリッド地図(約1 : 10,000縮尺) を整備し、訓練での活用・災害に備えてきたが、土砂災害や国民保護事案のような局所的な災害が発生した場合は、より大縮尺(縮尺1:1,500 ~1:3,000 程度) の大量な地図が必要となり、これを塩尻市全域に渡って常備したり、発災時に速やかに調達することは非常に困難で、この度災害時協定を締結することで、UTMグリッドセンターから塩尻市への有事における大縮尺地図の供給が可能になった。

同センターによると、国民保護事案等が発生する可能性のある市街地等エリアの電子地図データを事前に準備し、塩尻市へ提供する。万が一災害対策基本法に規定される災害、およびそれに相当する大規模な被害が発生した場合には、塩尻市が該当地域の地図を印刷し速やかに災害対応できるようにするという。

また、万が一塩尻市自身が地図を印刷できない場合や、事前準備していない地域の地図が必要となった場合には、状況に応じてクラウド印刷やモバイル印刷などにより迅速な地図供給に努めるとしている。

なお、UTM グリッド地図の製作にあたっては株式会社ファルコン(愛知県名古屋市) 製のGIS を使用しているという。