確率は低いが遭遇すると大きな危機に発展するリスク(イメージ:写真AC)

この記事はクマの襲来を受けた筆者の実体験を元に書き起こしたものです。

■Cさんの飛び入り参加で始まった懇親会

この日ハルトは、山を趣味とする会社の同僚たち-先輩のヒデさん、山ガールのマミさんとミユキさん-と夕食会です。ビールで乾杯し、目の前のお皿をつつきはじめた頃、ヒデさんがこう切り出しました。

「今日はちょっとサプライズがあるんだ。もうそろそろ…、おっ来たか」。ヒデさんの視線の先には「どうも、はじめまして」と言って遠慮がちに入ってくる見知らぬおじさんが。

彼はヒデさんの大学時代の後輩Cさんで、彼もまた学生のときから山登りを趣味としてきた一人です。ひとしきり5人でわいわい山の話に興じた後、今度は一人ずつ山のエピソードを語ることになりました。なかでもCさんの語った次のエピソードには、みんなが度肝を抜かれたのです。

それはCさんが一人でテントを背負い、夏の南アルプスに行った時のことです。長い長い林道歩きと登山道の厳しいアップダウンも手伝って、いつになく足取りがはかどりません。目的のテント場への到着が大幅に遅れるのは確実となりました。

開けた場所にある河原で一夜を明かしたときの体験(イメージ:写真AC)

午後7時半、もう足元が見えないくらいの暗さです。ひょっとするとテント場は目と鼻の先の距離にあるのかもしれませんが、もはや一歩を踏み出す気力さえありません。Cさんはやむなく森の開けた場所にある平坦な河原で一夜を明かすことにしました。手早く夕食を済ませ、寝袋に潜り込むと、谷川のせせらぎが心地よく眠気をそそります。