2024/01/25
令和6年能登半島地震

アウトドア用品メーカーのモンベル(大阪市西区、辰野勇会長)は能登半島地震の発災後、ボランティア組織「アウトドア義援隊」を発足。1月2日から奥能登の小さな避難所や在宅・車中避難の個人をまわり、水・食品、燃料、防寒着・肌着、衛生用品・生活用品などの物資を届けた。
アウトドア義援隊は1995年の阪神・淡路大震災の際、モンベルグループ代表で創業者の辰野勇氏が業界関係者に呼びかけてつくった任意団体。以後、国内外を問わず大きな災害で取引先や仕入先、顧客らに被害が出るたび組織を立ち上げ、物資の提供や援助金の受け付け、隊員たちによる現地の支援活動を行っている。
今回の地震では、羽咋市にある同社の倉庫自体が被害を受け、死者・負傷者こそなかったものの自宅やライフラインの損壊で4割の従業員の出社が困難化。また周辺には取引先や仕入先も多いことから発災後すぐ義援隊を発足、2日には先行隊が珠洲市や輪島市に入った。

先行隊の情報にもとづき、4日には第1陣として大阪本社から6人の社員ボランティアが物資を積んだワゴン車2台で出発。被災した羽咋市の倉庫を前線基地にすると、そこから片道数時間かけて奥能登に入り、珠洲市や輪島市などで水・食品、燃料など緊急性の高いものから配布を開始した。

アウトドア義援隊の活動は、主に小さな避難所や高齢者施設、在宅・車中避難の個人を支えるのが主眼。災害初期、自治体施設や大規模な避難所へ届いた救援物資が隅々に行き渡るまでにはタイムラグがあるためで、その間、少人数単位の避難者を中心に手助けする。
「当初はまったく情報がなく、現地で活動する他のボランティア組織などと協力。草の根的に情報を交換し合い、個別の避難場所を見つけてまわった。物資を届けた方からも『誰がどこに避難している』といった情報をそのつど教えてもらった」と、自身も義援隊の活動に参加した同社広報部の大塚孝頼さんは話す。
用品・用具の使い方や衣類・寝袋で暖をとるコツなど、アウトドアの知識も被災者に伝える。また、携帯トイレと目隠しで簡易なトイレスペースを設営するなどの作業もサポート。「高齢者の方が非常に多い。たとえ短い時間でも、話をしたり聞いたりして笑顔が戻ると、我々もホッとした気持ちになる」(同)という。


アウトドア義援隊は1月24日までに被災地へ第4陣を送り、モンベル社員を中心に延べ150人弱が活動。その間、趣旨に賛同する企業から届いた数多くの支援物資も被災地へ運んで配布した。今後は公的支援が進んできたことをふまえ、復旧の状況を見ながら、支援活動の内容を検討していく。
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
-
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
-
「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
東京海上グループが掲げる「防災・減災ソリューション」を担う事業会社。災害対応のあらゆるフェーズと原因に一気通貫の付加価値を提供するとし、サプライチェーンリスクの可視化など、すでに複数のサービス提供を開始しています。事業スタートの背景、アプローチの特徴や強み、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/06/11
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/10
-
その瞬間、あなたは動けますか? 全社を挙げた防災プロジェクトが始動
遠州鉄道株式会社総務部防災担当課長の吉澤弘典は、全社的なAI活用の模索が進む中で、社員の防災意識をより実践的かつ自分ごととして考えさせるための手段として訓練用のAIプロンプトを考案した。その効果は如何に!
2025/06/10
-
-
緊迫のカシミール軍事衝突の背景と核リスク
4月22日にインド北部のカシミール地方で起こったテロ事件を受け、インドは5月7日にパキスタン領内にあるテロリストの施設を攻撃したと発表した。パキスタン軍は報復として、インド軍の複数の軍事施設などを攻撃。双方の軍事行動は拡大した。なぜ、インドとパキスタンは軍事衝突を起こしたのか。核兵器を保有する両国の衝突で懸念されたのは核リスクの高まりだ。両国に詳しい防衛省防衛研究所の主任研究官である栗田真広氏に聞いた。
2025/06/09
-
危険国で事業展開を可能にするリスク管理
世界各国で石油、化学、発電などのプラント建設を手がける東洋エンジニアリング(千葉市美浜区、細井栄治取締役社長)。グローバルに事業を展開する同社では、従業員の安全を最優先に考え、厳格な安全管理体制を整えている。2021年、過去に従業員を失った経験から設置した海外安全対策室を発展的に解消し、危機管理室を設立。ハード、ソフト対策の両面から従業員を守るため、日夜、注力している。
2025/06/06
-
福祉施設の使命を果たすためのBCPを地域ぐるみで展開災害に強い人づくりが社会を変える
栃木県の社会福祉法人パステルは、利用者約430人の安全確保と福祉避難所としての使命、そして災害後も途切れない雇用責任を果たすため、現在BCP改革を本格的に推進している。グループホームや障害者支援施設、障害児通所支援事業所、さらには桑畑・レストラン・工房・農園などといった多機能型事業所を抱え、地域ぐるみで「働く・暮らす・つながる」を支えてきた同法人にとって、BCPは“災害に強い人づくり”を軸にした次の挑戦となっている。
2025/06/06
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方