2018/08/21
防災オヤジーズくま隊長の「知らないとキケンな知識」
実際の映像を見てみましょう。有名なオーストラリアのライフセーバーの動画です。
救命処置の継続時間はどうするか。
大規模災害時など救急隊が速やかに来ない、あるいは来ない場合にどの位で救命処置を断念するか大変悩みます。20分、30分、1時間。できれば、何人か交代しながら可能な限り続けることが重要だと思いますが、元救急隊員に聞いたところ「子供に30分蘇生処置をして息を戻した例がある」ということなので、自分なら最低30分は続けたいと考えてます。
皆さんはいかがでしょうか? やってみればお分かりになりますが、長時間続けるためには交替、交替で胸骨圧迫を行わないと、とても体力が持ちません。
ところで10分以上胸骨圧迫をしていると、要救助者の血液中の酸素が消費され酸欠状態となるとのこともあるようです。以前の心肺蘇生では胸骨圧迫を30回後に、マウス・トゥ・マウスを2回行い酸素を補給しておりましたが近年では、マウス・トゥ・マウスはせずに胸骨圧迫を連続で続ける手順を教えることが多くなっております。これは、通常の場合で119番通報から10分ほどで救急隊に引き継げることと、感染症防止の観点からだと思います。が、大規模災害時では救急隊到着は時間がかかるか来ません。個人的には、やはりマウス・トゥ・マウスも必要になると思います。
ちなみに、2015年に改訂された「JRC 蘇生ガイドライン 2015」では、「訓練を受けていない市民救助者は、胸骨圧迫のみの CPR(心肺蘇生) を行う。訓練を受けたことがある市民救助者であっても、気道を確保し人工呼吸をする技術または意思がない場合には、胸骨圧迫のみの CPR を行う」となっており、さらに「救助者が人工呼吸の訓練を受けており、それを行う技術と意思がある場合は、胸骨圧迫と人工呼吸を 30:2 の比で行う。とくに小児の心停止では、人工呼吸を組み合わせた CPR を行うことが望ましい」と捕捉されています。その意味でも、やはり訓練を受けておくことが必須でしょう。
最後に、先ほどの動画でもありましたが、居合わせた人(バイスタンダーといいます)に明確に指示を出すことが大切です。
「あなたは119番救急要請、電話してください。」
「あなたたち(複数)周囲の安全確保、車両を止めてください。」
「あなたとあなたはAEDを探して持ってきてください。」
「AED、胸骨圧迫のできる人はいますか。」
「近所でタオルや毛布(止血、体温保持、周辺からの目隠し用など)を調達してきてください。ポリ袋(手袋代用)もお願いします。」
「要救助者の容態変化を随時救急隊へ電話連絡してください(救急隊から119番通報者へ電話きます)」
などなど、実際に経験しないと、なかなか思いつかないことも多々あります。
経験者の話を聞いたり、自分なりのシミュレーション訓練を行うことで、未経験であっても練度をあげておくことができます。
AEDのボタンを押すだけでなく、あなたがた先頭に立って心肺蘇生ができるよう、あなたの勇気のボタンを押せるようにしておくことが最も大切です。
【参考】
「BCPのSOS」
第三者の目線でBCP診断をする「セカンドオピニオンサービス」
http://bcpsos.rescueplus.jp/
(了)
防災オヤジーズくま隊長の「知らないとキケンな知識」の他の記事
おすすめ記事
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月23日配信アーカイブ】
【4月23日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:南海トラフ地震臨時情報を想定した訓練手法
2024/04/23
-
-
-
2023年防災・BCP・リスクマネジメント事例集【永久保存版】
リスク対策.comは、PDF媒体「月刊BCPリーダーズ」2023年1月号~12月号に掲載した企業事例記事を抜粋し、テーマ別にまとめました。合計16社の取り組みを読むことができます。さまざまな業種・規模の企業事例は、防災・BCP、リスクマネジメントの実践イメージをつかむうえで有効。自社の学びや振り返り、改善にお役立てください。
2024/04/22
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月16日配信アーカイブ】
【4月16日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:熊本地震におけるBCP
2024/04/16
-
調達先の分散化で製造停止を回避
2018年の西日本豪雨で甚大な被害を受けた岡山県倉敷市真備町。オフィス家具を製造するホリグチは真備町内でも高台に立地するため、工場と事務所は無事だった。しかし通信と物流がストップ。事業を続けるため工夫を重ねた。その後、被災経験から保険を見直し、調達先も分散化。おかげで2023年5月には調達先で事故が起き仕入れがストップするも、代替先からの仕入れで解決した。
2024/04/16
-
工場が吹き飛ぶ爆発被害からの再起動
2018年の西日本豪雨で隣接するアルミ工場が爆発し、施設の一部が吹き飛ぶなど壊滅的な被害を受けた川上鉄工所。新たな設備の調達に苦労するも、8カ月後に工場の再稼働を果たす。その後、BCPの策定に取り組んだ。事業継続で最大の障害は金属の加温設備。浸水したら工場はストップする。同社は対策に動き出している。
2024/04/15
-
動きやすい対策本部のディテールを随所に
1971年にから、、50年以上にわたり首都圏の流通を支えてきた東京流通センター。物流の要としての機能だけではなく、オフィスビルやイベントホールも備える。2017年、2023年には免震装置を導入した最新の物流ビルを竣工。同社は防災対策だけではなく、BCMにも力を入れている。
2024/04/12
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方