2013/10/01
防災・危機管理ニュース
さまざまな機関が連携できる体制が急務
災害対策の標準化とそのあり方を検討する「災害対策標準化検討会議」の第1回会議が、2013年10月1日、内閣府で開催された。
冒頭、内閣府・防災担当の佐々木審議官は、「災害対策に関して、国や地方自治体などの各機関が連携して対応に当たらなければならないと、かねてから指摘されており、その活動をスムーズに推進するためにも標準化が重要な意味合いを持っている」と、検討会議が開催された背景を語った。
3.11のような大規模災害時には、さまざまな防災対策の機関が連携して活動することが求められる。阪神神戸大震災では、他地域から駆けつけた消防隊の消防ホースと被災地の消火栓の口径が合わず、応援活動がスムーズにいかなかったなどという反省もあり、標準化への取り組みは重要な課題として位置づけられてきてきた。
内閣府によると、国の各省庁間はもちろん、地方公共団体や民間企業、住民、NGO/NPOを含め、あらゆる機関が連携していくために、災害対策の標準化は早急に取り組むべき重要課題。昨年7月31日にとりまとめられた中央防災会議の防災対策推進会議の最終報告には、「国と地方公共団体、地方公共団体相互間の広域応援を総合的かつより円滑に実施するため、可能な範囲で災害対応業務のプログラム化、標準化を行うべきである」との一文が加えられた。また、今年6月に閣議決定された経済財政運営の基本方針にも「災害対策の標準化」に向けた検討を進めるという内容が盛り込まれた。
今回の会議では、出席した委員それぞれからプレゼンテーションの形で、標準化推進に対する意見が述べられ、京都大学防災研究所の林春男教授からは、「日本で災害対策の標準化を進める場合、国の省庁間での対応だけに限定して標準化をスタートしてはどうか。国が標準化されれば、都道府県はそれに合わせて標準化が進むことになり、さらに市町村単位にまで浸透すると考えられる。最初から、末端の行政機関にまで負担をかけるものではなく、自然・必然的に広まっていくことに期待したい」との提言もあった。
検討会議の委員は以下の通り。(50音順)
・小林 恭一 東京理科大学総合研究機構火災科学研究センター 教授
・重川 希志依 常葉大学大学院環境防災研究科 教授
・柴崎 亮介 東京大学空間情報科学研究センター・生産技術研究所 教授
・中林 一樹 明治大学大学院政治経済学研究科 特任教授
・中邨 章 明治大学 名誉教授
・林 春男 京都大学防災研究所巨大災害研究センター 教授
災害対策の標準化については、アメリカがNIMS(米国インシデント管理システム)」という制度により、危機対応の組織や指揮調整の手法を国家として統一しているほか、2011年にはISO(国際標準化機構)が危機対応の国際標準規格ISO22320を発表した。同規格は、今年10月21日にJIS化される予定。
検討会義では、今年度は、委員を学者中心とし、アウトラインや思想をまとめ、来年度以降はさらに具体化した方向で話し合いが進めていくことが予想される。
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
緊急事態宣言下の社会江戸庶民の危機対応に学ぶ
国内で新型コロナの感染が確認されてから約1年。度重なる緊急事態宣言の発出と延長もあり、影響が長期化しています。しかし、日本社会が感染症の危機に直面したのは今回が初めてではありません。近代以前の社会は感染症の危機にどう対応してきたのか。日本近世史、医療社会史を専門とする奈良女子大学の鈴木則子教授に聞きました。
2021/02/26
-
災害時のトップの役割は何ですか?
リスク対策.comが行った地震シミュレーションアンケートの結果から、災害対策のポイントを学ぶシリーズ3回目は代替要員です。このシリーズが終わる頃には、きっと自分たちの防災やBCPのレベルが向上しているはずです!
2021/02/23
-
資金繰り支援頼みでギリギリ経営を維持負債増えるも売上なし 春先の息切れ懸念
新型コロナ関連の経営破たん件数は、昨年9月以降1カ月90~100件超の高い水準で推移。2月も最多の発生ペースを更新している。緊急事態宣言解除が見送られ、外出自粛や時短要請が引き続き売上を圧迫。年度末を控え、息切れ企業の増加で倒産はさらにピッチを上げる可能性が高い。リレーインタビュー第4弾は中小企業の経営環境について。
2021/02/22