2018/09/04
防災・危機管理ニュース
有限責任監査法人トーマツは8月31日、「グローバルビジネスリスク記者勉強会」を開催。ディレクターの茂木寿氏が、直近の世界情勢でいま日本企業が対応すべき最新の海外リスクについて解説した。8月時点で最も大きなリスクとして米中貿易摩擦を取り上げ、今後両国の追加関税の応酬が激化・長期化すれば中国や米国に拠点をもつ日系企業も経営戦略の見直しを迫られざるを得ないと、注意を呼び掛けた。
「米国第一主義」を掲げるドナルド・トランプ大統領は、米大統領選挙期間中から貿易赤字削減を訴えてきた。特に米国の最大貿易赤字国である中国に対して、2017年1月の大統領就任後から政府内で施策検討が始まり、今年7月から次々と追加関税を発動している。
追加関税を最初に発動したのは米国。今年7月6日にトランプ政権が対中輸入818品目(約340億ドル相当)に対して25%の追加関税を発動。これに対し中国政府も同日に対米輸入額約340億ドル相当の輸入に対して25%の報復関税を発動した。
米国は第二弾として8月23日に279品目(約160億ドル相当)に対して25%の追加関税を開始したのに対し、中国政府も同日に160億ドル相当の品目に対して25%の追加関税を発動した。
米国は今後さらに第4弾として2000億ドル相当の大規模な追加関税を行う計画を発表しており、中国政府もその報復措置として600億ドル相当の対米輸入に4段階の関税率で追加関税を行うと発表している。両国の追加関税の応酬は激化・長期化の様相を呈している。
関税応酬いつまで続くか
今後の焦点は、追加関税の応酬がいつまで続くか。米国は中国に対して関税引き下げの条件として、米国企業が中国市場に参入する際の障壁となっている①知的財産権の保護、②特定産業を保護する補助金の撤廃、③産業障壁の撤廃、の3つを挙げ、これが実現しない限り追加関税を撤廃しない強硬な姿勢を示している。
昨年の米中間の輸出入実績では、中国から対米輸出額は年5000億ドルに対し、米国から対中輸出額・年間1300億ドル。茂木氏によれば「このまま追加関税の応酬が続けば、中国は打つ手が無くなり、最終的に不利な条件を受け入れざるを得なくなる」という見方がある。
ただ茂木氏は「中国政府は簡単に音を上げて妥結することは考えにくい。米国も好景気で関税引き上げの国内経済への影響は限定的で、11月の中間選挙に向けて支持率獲得のために強硬姿勢が続く」と事態の長期化を予測する見方が大勢を占めているという。
日系企業にも影響懸念
米中貿易摩擦の長期化は、日系企業への影響も大きい。とくに「中国で生産したものを、米国に輸出する」というビジネスモデルが在中や在米の日系企業にとって、関税高騰は製品や原材料の値上がりを招き、市場の価格競争力を低下させる。茂木氏は「長期化すれば売上計画の大幅な見直し、中国以外へ生産拠点移転、サプライチェーンの見直しを検討する必要性がでてくる」とみる。
また今回の中国に対する制裁関税が、今後EUや日本にも広がる可能性もある。茂木氏は「グローバル展開する日系企業にとって、特定地域の生産・市場に縛られない新たなポートフォリオを考え直す岐路に来ている」と注意を促している。
(了)
リスク対策.com:峰田 慎二
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
令和8年熊本地震 猛暑の被災地で熱中症を避ける
最大震度7を記録した令和8年熊本地震。熊本県内では400超の避難所が開設され、約9千人が避難している(29日時点)。真夏の避難生活は、熱中症の危険性を確実に高める。しかもこれからは、猛暑・酷暑下での復旧活動が本格化し、多くの人々が被災地で活動する。現地で熱中症をどう防いだらいいか。熱中症と災害医療に詳しい、さいたま赤十字病院高度救命救急センターの席 望医師に対策を聞いた。
2026/07/30
-
令和8年熊本地震 広がるデマ、どう見分ける?SNSとの向き合い方
28日に発生した最大震度7を記録した熊本地震では、早くも豪華寝台列車「ななつ星」が脱線したなどのデマ情報が広く拡散された。災害のたびに、広くSNSで拡散される情報にどう向き合えばいいか。デジタル空間の情報分析を専門とする Japan Nexus Intelligence の竜口七彩氏に聞いた。
2026/07/29
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2026/07/28
-
-
事例研究で有事に備え、組織の体質改善で形骸化を防ぐ
組織レジリエンスの強化やサイバーセキュリティーの向上、サプライチェーンの強靭化など、危機管理やリスク管理担当者が関与する領域は年々拡大している。変化する社会状況にあわせ、担当者はどのように学び、備え、対応することが求められるのか。森総合研究所代表の森健さんは、自治体と企業で危機管理担当者としての経験を積み、現在はコンサルタントとして、企業や団体の危機管理の支援を手がけている。自身の経験を踏まえ、危機管理の担当者にどうアドバイスしているのか、話を聞いた。
2026/07/27
-
-
-
-
-







※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方