2024/12/08
防災・危機管理ニュース
【ベルリン時事】東欧ルーマニアで、8日に決選投票を控えていた大統領選挙が、憲法裁判所の判断で急きょ中止され、候補者の届け出からやり直す異例の事態となっている。中国系短編動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」が不正利用されたもようで、先月行われた第1回投票では泡沫(ほうまつ)扱いされていた無所属候補が首位に立った。有権者に広がる深刻な政治不信も鮮明になり、混乱が続いている。
渦中の候補はカリン・ジョルジェスク氏(62)。国連機関や環境省でキャリアを積んだ学識者とされ、選挙戦では伝統重視や「ルーマニア第一」を掲げた。新型コロナウイルスの存在を否定し、人類による月面着陸を「でっち上げ」と主張したこともある。
10月までは多くの世論調査でジョルジェスク氏の支持率は1%に満たなかった。しかし、11月24日の第1回投票で、有力候補とされていたチョラク首相らを抑え、約23%の得票率でトップに躍り出た。現地メディアも「ジョルジェスク氏とは誰か」と報じるサプライズだった。
実態を調査したルーマニア当局は、ジョルジェスク氏の情報をTikTokで拡散したインフルエンサーらに計38万1000ドル(約5700万円)が支払われていたことを把握。約2万5000のTikTokアカウントを利用した大規模な選挙運動が展開されたと報告した。
資金源を調べたところ、暗号資産事業を手掛ける男が容疑者として浮上。検察は今月7日、選挙違反やマネーロンダリング(資金洗浄)の疑いで、男の関係先を家宅捜索した。男はジョルジェスク氏と面識はなく、理念に共感したと主張している。
ジョルジェスク氏はロシアのプーチン大統領を「愛国者」と呼び、ロシアの侵攻を受けるウクライナ支援の停止を訴えていた。こうした経緯から「ロシアの関与」(チョラク氏)を疑う見方もある。
一方、投票データが改ざんされた形跡はなく、多くの有権者がジョルジェスク氏に一票を投じたことは事実だ。今回の事態は政治への潜在的な不満が表れたともいえる。ジョルジェスク氏は選挙のやり直しについて、民主主義を攻撃する「クーデター」だと訴え、支持者に当初の予定通り投票所に足を運ぶよう呼び掛けた。
〔写真説明〕ルーマニア大統領選候補のカリン・ジョルジェスク氏=11月26日、南部イズボラニ(AFP時事)
(ニュース提供元:時事通信社)

防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/05/05
-
企業理念やビジョンと一致させ、意欲を高める人を成長させる教育「70:20:10の法則」
新入社員研修をはじめ、企業内で実施されている教育や研修は全社員向けや担当者向けなど多岐にわたる。企業内の人材育成の支援や階層別研修などを行う三菱UFJリサーチ&コンサルティングの有馬祥子氏が指摘するのは企業理念やビジョンと一致させる重要性だ。マネジメント能力の獲得や具体的なスキル習得、新たな社会ニーズ変化への適応がメインの社内教育で、その必要性はなかなかイメージできない。なぜ、教育や研修において企業理念やビジョンが重要なのか、有馬氏に聞いた。
2025/05/02
-
-
備蓄燃料のシェアリングサービスを本格化
飲料水や食料は備蓄が進み、災害時に比較的早く支援の手が入るようになりました。しかし電気はどうでしょうか。特に中堅・中小企業はコストや場所の制約から、非常用電源・燃料の備蓄が難しい状況にあります。防災・BCPトータル支援のレジリエンスラボは2025年度、非常用発電機の燃料を企業間で補い合う備蓄シェアリングサービスを本格化します。
2025/04/27
-
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
-
-
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
-
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方