2024/12/14
防災・危機管理ニュース
【パンガー(タイ南部)時事】22万人超の死者・行方不明者を出したスマトラ沖地震・インド洋大津波から20年となるのを前に、東北大災害科学国際研究所の保田真理講師(68)=兵庫県三木市出身=が、被災地のタイ南部パンガー県の学校で防災授業を行った。東日本大震災での津波被害を教訓に始まった授業は、「災害弱者」になりやすい子供たちの防災意識を高めるのが狙いだ。
2004年12月26日に発生した大津波で、タイの死者・行方不明者は8600人を超え、特にパンガー県は被害が甚大だった。保養地として知られる近隣のプーケット島などでは、観光客ら日本人28人も犠牲になった。
保田氏はタイ政府主催の実地調査やシンポジウムに参加し、今月11日に2回、パンガー県の学校で小中学生を対象に授業。津波に関するビデオを見たり、災害発生時の行動をスタンプラリー形式で学習したりした。インド洋大津波を機に、津波を研究するため東北大に留学したタイ人のサッパシー同大准教授(41)が通訳を務めた。
参加した中学2年の女子生徒スニサさん(14)は「津波が起きた時にどうすればいいか、学ぶことができた。家族や友達、知人に伝えたい」と話した。
保田氏の防災授業は、東北大のプロジェクトとして13年に始まった。東日本大震災の津波で児童と教職員の計84人が犠牲となった宮城県石巻市の旧大川小学校の事例を教訓に、災害時に子供が自ら必要な行動ができるようにすることを重視。宮城県や静岡県などのほか、タイ、インドネシア、フィリピン、米ハワイ州で、これまでに計422回行っている。
保田氏は「今後は学校の先生だけでも防災授業ができるように、持続可能な形にすることが大事だ」と指摘。子供たちに防災の大切さを伝える人材育成の必要性を強調した。
〔写真説明〕2004年のスマトラ沖地震・インド洋大津波被災地のタイで防災授業を行う東北大学の保田真理講師(右)=11日、南部パンガー県
(ニュース提供元:時事通信社)

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