2025/01/15
防災・危機管理ニュース
貸金庫ビジネスが岐路に立たされている。三菱UFJ銀行の貸金庫から顧客資産が盗まれた事件では、顧客が何を預けているか銀行側が把握できないという課題が浮き彫りになった。プライバシー保護が主な理由だが、識者は脱税や犯罪に使われるリスクも指摘する。
貸金庫は通常、メガバンクや地銀、信託銀行の支店地下などにあり、厳しい審査に通った顧客のみが借りることができる。関係者によると、富裕層の常連客を囲い込むサービスとしての位置付けが大きいという。
貸金庫には開閉記録が電子的に記録される「全自動型」と、金庫室への入退室が記録される「半自動型」、行員が同行するなどして鍵で開閉する「手動型」がある。セキュリティー面では全自動型が最も安全だが、「全くもうけにならず設備を更新しづらい」(銀行関係者)ため、かつて採用したときのまま、支店ごとに開閉方式が異なるのが実情だ。
銀行側は原則として、預けるものは確認せず、プライバシーが保護されているのも特徴の一つ。貴金属や証書といった重要書類、思い出の品などが想定されているが、実際は現金を預ける顧客も多いとされる。
メガバンク3行の規定では、現金の預け入れについて明文はない。うち1行の関係者は「預けていいとも悪いとも言っていない」と説明する。災害や近年多発している連続強盗対策としてニーズがある一方、メガバンクで勤務経験のある椎名英之弁護士は「預金口座と違って国税庁に収入を知られず、脱税の手段になっているとの指摘は免れない」と話す。
椎名弁護士は「中身が見えない以上、違法なものも預けられてしまうので、(銀行側が)犯罪に加担してしまうリスクもある」と指摘。広くニーズに応える銀行側の役割に理解を示しつつ、「中身を把握できるよう見直してもいいのではないか」と話す。
三菱UFJ銀行の半沢淳一頭取は事件発覚後に開いた会見で、貸金庫の中身を把握できないリスクについて、「ニーズを踏まえながら、どのように変えていくべきか検討を進める」と述べるにとどめた。
〔写真説明〕三菱UFJ銀行の看板(資料写真)
(ニュース提供元:時事通信社)

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