ネット情報規制の壁はもう崩壊している
第79回:情報環境の激変で顕在化するリスク(1)

多田 芳昭
一部上場企業でセキュリティー事業に従事、システム開発子会社代表、データ運用工場長職、セキュリティー管理本部長職、関連製造系調達部門長職を歴任し、2020年にLogINラボを設立しコンサル事業活動中。領域はDX、セキュリティー管理、個人情報管理、危機管理、バックオフィス運用管理、資材・設備調達改革、人材育成など広範囲。バイアスを排除した情報分析、戦略策定支援、人材開発支援が強み。
2025/01/17
再考・日本の危機管理-いま何が課題か
多田 芳昭
一部上場企業でセキュリティー事業に従事、システム開発子会社代表、データ運用工場長職、セキュリティー管理本部長職、関連製造系調達部門長職を歴任し、2020年にLogINラボを設立しコンサル事業活動中。領域はDX、セキュリティー管理、個人情報管理、危機管理、バックオフィス運用管理、資材・設備調達改革、人材育成など広範囲。バイアスを排除した情報分析、戦略策定支援、人材開発支援が強み。
情報環境の変化は、筆者の他の論考でも多く語ってきた。その変化は、端的にいうと次の2点にある。
・フローからストックへの変化
・発信(配信)から双方向性通信への変化
この変化は、実は相当前から起きている。「ネット社会」と総称されるさまざまな事案がそれだ。
政治家やマスメディアなどは「ネット社会」の影響を数々論じ、その効果的利活用の必要性を訴えながら、その実、その影響を限定的に抑え込もうとしていたように筆者は感じる。情報という、いわゆる「第四の権力」の既得権益を保持するため、新たな動きを既存環境の影響下に留めようとしていたように見える。そのことに既得権益側が気付いていたか否かは定かでないが、自然現象として起きる抵抗勢力の行動であると論じてよいだろう。
そうした抵抗により、これまでは、情報環境の変化による影響は、現実社会では限定的に見えていた。政治の世界でも、ネットでの人気が実際の選挙での投票行動とは異なるように、情報環境変化の影響が実社会に及ぶことはわずかであった。
筆者の立場であえて申し上げると、「ネット社会」の情報も、既得権益側が支配し規制していたと言わせていただきたい。しかしここへきて、さまざまな現象が発露している。あたかも、今までせき止めていた堤防が決壊したかのようだ。いったん決壊した堤防が浸水を避けられないのと同様、今までせき止めていたがために、余計に大きなパワーとして押し寄せてきている。
それゆえ、既得権益側の自己防衛反応も過激化している。ネットの情報を危険と決めつけ、規制が必要と言い出している。はっきり申し上げるが、すべての情報環境において、一定の規制が必要になるケースは想定すべきであろう。しかしそれは、すべての情報環境に公平かつ公正であるべきだ。ネットの情報に限定するのは根本的に間違っていると断言する。
マスメディアには放送法などの規制があるが、ネットは野放しという論をよく耳にする。しかしこれは、根本的な認識違いと断じてよいだろう。詳しくはこのシリーズで語っていきたいが、以前に語った日比谷焼き討ち事件(連載第67回「交渉に『勝った』ことが日本を追い詰めた」)や、いまだ現存する近隣諸国との歴史認識の違いに関する問題などを考えれば、オールドメディアの情報権力による弊害は計り知れなく大きい。
再考・日本の危機管理-いま何が課題かの他の記事
おすすめ記事
阪神・淡路大震災30年「いま」に寄り添う <西宮市>
西宮震災記念碑公園では、犠牲者追悼之碑を前に手を合わせる人たちが続いていた。ときおり吹き付ける風と小雨の合間に青空が顔をのぞかせる寒空であっても、名前の刻まれた銘板を訪ねる人は、途切れることはなかった。
2025/02/19
阪神・淡路大震災30年語り継ぐ あの日
阪神・淡路大震災で、神戸市に次ぐ甚大な被害が発生した西宮市。1146人が亡くなり、6386人が負傷。6万棟以上の家屋が倒壊した。現在、兵庫県消防設備保守協会で事務局次長を務める長畑武司氏は、西宮市消防局に務め北夙川消防分署で小隊長として消火活動や救助活動に奔走したひとり。当時の経験と自衛消防組織に求めるものを聞いた。
2025/02/19
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/02/18
阪神・淡路大震災30年 いま問われるもの
日本社会に大きな衝撃を与えた阪神・淡路大震災から30年。あらゆる分野が反省を強いられ、安全を目指してさまざまな改善が行われてきました。しかし、日本社会にはいま再び災害脆弱性が突き付けられています。この30年で何が変わったのか、残された課題は何か。神戸大学名誉教授・兵庫県立大学名誉教授の室﨑益輝氏に聞きました。
2025/02/06
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方