【ニューデリー時事】インドによるパキスタン攻撃の引き金となったのは、両国の係争地カシミール地方で起きたテロだ。同地方は、印パ対立の根源として多くの紛争を引き起こし、南アジアの「火薬庫」と呼ばれる。
 カシミールは英領インド時代、半ば独立した一つの藩王国だった。住民の多数派はイスラム教徒だったのに対し、藩王はヒンズー教徒。1947年、ヒンズー教主体のインドとイスラム教を国教とするパキスタンが英領インドから分離独立する際、藩王がインドへの帰属を表明したことで印パの戦争に発展した。
 国連の仲裁で停戦したものの恒久的な和平に至らず、第2次戦争が勃発。71年には東パキスタン(現バングラデシュ)の独立を巡り第3次戦争が起き、カシミールも戦地となった。3度の戦争を経て、同地方は印パそれぞれの支配地域に事実上分割された。
 近年も両軍の小競り合いや、インドからの独立などを訴える過激派によるテロが発生してきた。こうした中、インドのモディ政権は2019年、同地方のインド側に当たるジャム・カシミール州に対し特別な自治権を認めていた憲法の規定を廃止。州を二つの連邦直轄地に分割した。カシミールの支配強化が主な狙いとされ、パキスタンは対印貿易を停止するなど猛反発した。 
〔写真説明〕カシミール地方のインド側中心都市スリナガルで警備に当たる治安要員=4月28日(AFP時事)

(ニュース提供元:時事通信社)