2025/06/07
防災・危機管理ニュース
政府が6日示した経済財政運営の基本方針「骨太の方針」の原案は、「賃上げを起点とした成長型経済の実現」を柱に据え、物価変動の影響を差し引いた実質賃金の年1%程度の上昇を目標に定めた。賃上げは大企業を中心に進む一方、中小企業や地方への波及が課題。政府は「政策総動員」の姿勢を強調したが、人手を確保するための「防衛的賃上げ」からの脱却がカギを握る。
「商品価格に(仕入れ)コストの転嫁がしづらく、賃上げが利益を圧迫し厳しい」(九州の小売業者)―。
全国の中小企業が加盟する日本商工会議所が実施した2025年度の調査では、正社員の賃上げ率は4.03%。ただ、賃上げを実施・予定する企業の約6割は、業績が改善していないが人員を確保するための「防衛的な賃上げ」を迫られている実態が明らかになった。
厚生労働省が5日発表した4月の毎月勤労統計調査では、実質賃金が前年同月比1.8%減と、4カ月連続のマイナス。物価上昇の勢いに賃上げペースが追い付いていない。
骨太原案では「賃上げこそが成長戦略の要」として、所得と生産性の向上を強調。中小企業の賃上げ実現に向け、29年度までに官民で60兆円程度の投資を掲げた。人工知能(AI)などデジタル技術を使える人材の育成に力を入れる方針も示し、その実効性が問われる。
賃金底上げの要となる最低賃金について、政府は20年代に1500円を目指す。原案には、中央最低賃金審議会(厚労相の諮問機関)が例年夏に示す引き上げの「目安」を上回る都道府県に対し、補助金や交付金で支援する方針を盛り込んだ。日本より水準が高い欧州連合(EU)で用いる指標を参考に、審議会で目安を議論するとの方向性も示した。
第一生命経済研究所の新家義貴シニアエグゼクティブエコノミストは、秋以降に実質賃金がプラスに転じると予想する一方で、「トランプ関税の影響で企業業績が悪化すれば26年春闘の賃上げ率が大きく鈍化する恐れがある」とも指摘。トランプ関税のリスクは、賃上げにも暗い影を落としている。
(ニュース提供元:時事通信社)
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