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地球環境大賞は1992年、地球温暖化防止や循環型社会の実現に寄与する新技術・新製品の開発、環境保全活動・事業の促進と、21世紀の社会システムの探求、地球環境に対する保全意識の向上を目的として創設されました。カーボン・オフセット大賞は、2011年、カーボン・オフセットの取り組みを通して、市場のグリーン化をリードする団体の地球温暖化対策から波及する複合的な社会貢献を奨励する目的で、設立されました。いずれも地球温暖化防止と低炭素社会の実現を推進する取り組みに対する大賞です。第19回に引き続き、地球環境大賞とカーボン・オフセット大賞の内容と動向を紹介いたします。

(1) 地球環境大賞の内容と動向

地球環境大賞は、フジサンケイグループが、産業の発展と地球環境との共生をめざし、産業界を対象とする顕彰制度として世界自然保護基金ジャパン(WWF Japan: World Wide Fund for Nature Japan)の特別協力を得て創設されました。地球環境大賞の主な内容は、図表1のとおりです。

地球環境大賞は、1998年に自治体を、2003年には、大学や市民グループも顕彰対象に加えて、企業、行政、市民が一体となった制度の充実を図っています。2005年からは、大学部門を学校に拡大し、小・中・高校も対象に加えて環境保全への意識向上を目指して、毎年、企業・団体を募集しています。

地球環境大賞の選出審査基準は、次の7つです。

① 経済の発展と地球環境との共生に寄与している。
② サスティナブルな社会の実現へ高い環境理念や行動計画を有し、SDGs に向けて取り組んでいる。
③ 独創性、先導性がある。
④ 模範となりえる先進的な活動で地球規模の環境保全に貢献している。
⑤ 技術・製品開発や活動で顕著な環境改善効果が期待できる。
⑥ 産学官の連携や複数の事業者との共同事業化などで主導力を発揮している。
⑦ 地域や社会との環境調和の構築に積極的な役割を果たしている。

地球環境大賞の29回(2020年)から33回(2024年)までの受賞者は、図表2のとおりです。

図表2をみますと、第31回からは、「総務大臣賞」と「日本商工会議所会頭賞」が追加され、第33回からは、「特別賞」が追加されています。国民に対する地球環境への保全意識を高めたいという目的が伝わってきます。

5年間の受賞者は、毎回ほぼ入れ替わっていますが、2回受賞は、森ビル、東レ、東日本電信電話であり、3回受賞しているのは、積水化学工業です。

積水化学工業は、図表2には示されていませんが、第28回でも「国土交通大臣賞」を受賞しており、第28回、第29回、第30回、第32回と連続して受賞しています。積水化学工業の受賞理由は、「エネルギー(電気)自給自足」をコンセプトに、家庭用蓄電地などの先進機器を搭載した住宅を販売して、自然災害時の被害を抑制し「住宅避難」ができる家を考案したこと、また、建てる時も建てた後も、地球環境に配慮した「セキスイハイムの循環型モデル」が認められたからです。

第32回に大賞を受賞した森ビルは、「『虎ノ門ヒルズステーションタワー』と『麻布台ヒルズ』が開業~豊かな緑地空間と再エネや廃棄物のための先進システムを設置~」の内容で受賞しています。同社グループは、環境理念に「立体緑園都市」を理想とする「街づくりとその運営」を通じて、未来につながる持続可能な社会の実現に貢献することが狙いです。

第33回に初めて大賞を受賞したキャノンは「ナノインプリントリソグラフィ(NIL)を用いた半導体製造装置の製品化」に世界で初めて成功し、省電力化を実現したこと、廃液排出量の削減と環境負荷を大きく低減させることが理由で、受賞しています。